金曜日にみたもの。
「アニュス・ベラドンヌ」フランス演劇クレアシアオン。
芝居と言えば日本の芝居が主なもので、 外国の翻訳物のエスプリと知性がよく理解できなくて二の足を踏んでいたのですが、特にハロルド・ピンターの芝居をみてからは「あたしはここまでバカなのか?」と言うくらい、理解と想像が働かなくて、それ以来翻訳物を観にいくのはよっぽどのことがない限り挑戦しないことにしていたのですが、 坂本さんがお出になるというよっぽどのことだったのでみにいってきました。はい。(オイ) あと家からすごい近かったからね。
あらすじは大女優アニュスは夫の俳優イゴールとふたり芝居の初日を迎えた楽屋。衣装係のジゼル、マネージャー兼プロデューサーのピエール、そしてアニュスのファンであり女優志望のアンヌ、新聞記者のフィリップなどがざわめいているとところからはじまり、アニュスが亡くなり、アンヌが大女優 になり、ジゼルが衣装係をやめるところで終わる。
つう、感動的!なみたいなドラマティックなあらすじ自体がない話なんですけど、あたしは面白かったです。 他の職業の人間から冷静にみると、役者っていうのは理性的な部分だけでは仕事を進められない難しい仕事だなあ、役をもらったもらわない、上手くできたできない、で役者同士のせめぎあいも、熾烈できびしいもんだなーってね。 感覚を大事にする職業の繊細さもみえかくれして、感心する部分ももちろんあるんだけど、大体がかなりこっけいにみえて、ぷぷぷって思わず笑ってしまった。 でも役者の本人達は笑い事でないんですよね…?きっと。
繊細かつこっけいの最たるもの。 アニュスはアンヌに女優の仕事について、足の悪い闘牛士と黒い牛の対決について、その対決のあと魔術がおりてくる瞬間をみたこと。女優にはそんな神秘が必要だということを語った後、 「お客様のための芝居?まさか!自分の芝居がうまくいった瞬間は自分がいちばんわかる」 なんてのたまわったり、初日のお祝いにレストランにいそぐのは忘れないんですね。 っていう尊大でおおらかな女優っぷりに敬服&脱帽。 木村さんの大女優ぶりがもう、ほんと、女優さんって、どこの国でもこう書かれるけど、本当にそうなの?と本気で信じてしまいそうでした。 特にかつて自分に来ていた役の仕事の依頼がアンヌにきたことを知って、混乱と嫉妬とさびしさと威厳のいりまじった微笑みの複雑さがいいなあ。
あと、女優さん役ではないけど、 ジゼル、坂本マンソニエ岳大さんのインタビューでも「ジゼルは皆がやってみたい役っていわれるから」責任重大みたいなことをあとで読んでなるほどでしたね。 仕事と立場がそれぞれ違う人たちが初日のお祝いに、 「キャリーオンにいこう」という時に、 「衣装は生き物だから、手入れしなきゃ」 と断るジゼルの心意気と、退職したその日に(もう仕事しなくていいから)、 「キャリーオンにいこう」 と微笑む姿がすごく印象的。 アニュスが「黒い牛の神秘」を胸に女優業をまっとうしたように、 「黒い牛の神秘なんてわかんないわ」といい、自分の仕事を自分でまっとうしたことを語るラストだったと思います。 女優と同じ位に威厳を持って仕事にのぞむのがかっこいいですもん。
岳大さん。 あたしは『火取り虫』を観損ねたので、はじめて男性役をみました。(笑) なんか、優男でナイーブでアンヌに気をとられてみたり、状況に右往左往しながらも、誠意をつくそうとしているのをいつもニコニコしているつう半端さ!!(褒めてます) 花束を何度も受け渡しするところととうとうキレルところが爆笑。 フィリップ楽しすぎ。 そして、男振りもかっこいいじゃないですか。ちょっと好きかもしれない。(呟)
それにしても舞台をつくるのは制作、役者、実地のスタッフ、マスコミ、いろんなものにささえられてやっているのね。(ため息) 芝居は大変贅沢なものを目の前でみているものなのね。 じゃあ、あたしも姿勢を正して、真摯に芝居はみなきゃ!
あ、ロビーに作者のアレーグルさんと岡田さんともいて、 「ボンジュール!」 なんて知り合いの方たちと握手してた。 面白い芝居だったので岡田さんにサイン貰いたいと思わず立ち止まってしまったミーハーなあたし。いや、してもらいませんでしたが。←当たり前です。 おや?真摯に芝居をみるんじゃなかったのか?るなふさん……。
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