林心平の自宅出産日記

2005年01月19日(水) 「家事は楽だ」と言ったこと

 これまで妻は、周囲の人から幾度となく、「なぜ家事をしないのか」と問われてきました。たいていの人は、ぼくのほうが料理がうまいから、などと理解しようとします。けれど、実際には、ぼくよりも妻のほうが料理も上手だし、そうじも丁寧だし、洗濯物をたたむのだって、きっちりとしています。
 妻は体が弱いからとか、妻は完璧主義だからやりはじめるととことん突き詰めてしまうから、などと答えたこともありました。

 妻は先日、辰巳芳子さんが出演していたテレビを観て以来、家事のことを考えていました。そして、その問いの答えがわかりました。それは、数年前のぼくの発言にあったと言うのです。
 当時、1人目の子どもがうまれて、ぼくはアルバイトをし、妻は家で家事と育児に追われていました。そんなとき、ぼくは妻に
「三食昼寝つきで楽でいいなあ」と言ってしまったのです。
 それなら、やってみればいい、ということになり、妻と交代して、妻がアルバイトをして、ぼくが家にいた時期もありました。実際、家にいて家事と育児をやっていると、ちっとも楽ではなく、むしろ、オンとオフがなくて間断なく続く仕事なのだということがよくわかりました。

 また、ぼくが洗濯物を干してたたむと、いつだってしわしわでした。そのことを妻に指摘され、「もっと丁寧にやってほしい」と言われたときのことです。ぼくはこう言いました。
「それは家事に対する基準が違うということで、ぼくは、そこまで求めていない。だから、これでいいと思う」

 今にいたるまで、ぼくは自分の「三食昼寝つきで楽でいいなあ」という発言について、取り消して謝ると言うことをしていませんでした。
 日々の忙しさの中で、そのことを気にかけることなくきてしまいましたが、妻の中ではそのことが、まるで炭の「オキ」のようにくすぶって燃え続けていました。無意識のうちに、ぼくが「謝るまで家事をしないぞ」と思っていたのだろうと、今思い返すとそのように理解される、とのことでした。

 妻は、いっしょうけんめい家事をしていました。ぼくはそのことを理解していませんでした。それどころか、完璧にやりとげようとする妻に対して、そして、「そこまで求めていない」と言って否定しました。そして、「三食昼寝つきで楽でいいなあ」と言ったのです。

 今、ぼくは、身にしみてこう思います。
「家事もひとつの仕事。育児もひとつの仕事。きちんとやることは、とてもたいへんなこと。そして、とても大切なこと。」
 だから、今、あのときの発言のことをあやまりたいと思います。

「三食昼寝つきで楽でいいなあ」だなんて言って、ごめんなさい。それから、いっしょうけんめいやってくれてありがとう。ぼくも、もっと、きちんとできるように努力します。これからも、一緒にやっていこうね。

 この話をしてから、妻がメールをくれました。気づいたこととして、
「子どもは親のする家事、育児について、決して『そこまで求めていない』などと言わないこと。手をかければかけるだけ喜んでくれます。」


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