暑い夏は、涼しい部屋での読書が好きだ。 仕事の合間、電車の待ち時間、日常生活から自分を 遠ざけるために、読みふける。
仕事帰りに、本屋に行き、三島「小説家の休暇」を手にとる。 最初にページの日記はうだるような夏にふさわしい記述だ
「夏という観念は、二つの相反した観念へ私をみちびく。 ひとつは生であり、活力であり、、健康であり、ひとつは 退廃ではり、腐敗であり、死である。
1945年から47,8年にかけて、いつも夏がつづいていたような 錯覚がある。
あの時代には、骨の髄まで因習のしみこんだ男にも、お先真っ暗な 解放感がつきまとていた筈だ。あれは実に官能的な時代だった。 倦怠の影もなく、明日は不確定であり、およそ官能がときずまされる 条件がそなわっていたあの時代。
私はあのころ、実生活の上では何ひとつ出来なかったけれども、 心のうちには、悪徳への共感と期待がうずまき、何もしないで いながら、あの時代とまさに「一緒に寝て」いた。」
時代とともに寝る官能。
結婚という、確立された輝かしい未来に官能はない 先が予想できない関係のガラス細工のような深淵に 人間は、導かれていくのだろう
永遠を否定する女でありたい
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