今の世の中、紙おむつは常識、 でも私が出産した頃は、もちろん布おしめの時代です。
産前五週間前になり、産休に入った私が最初にしたこと、 ミシンを買いました。もちろん、おしめを縫うためです。
おしめ用の生地の反物を買い、先輩ママのアドバイス通り おしめ百枚、カタカタと縫いしました。
実は、直前まで働いていたその職場で、私は「漏れない紙おしめ」の 実験をしていたのです。
当時、「ええ! 紙おしめだってぇ〜!」とみんなで驚いたものです。 「漏れない紙おしめなんて赤ちゃんが可愛そうよー」 「そんな物、できるわけないわー」と。
ひょっとして、当時、紙おしめは既に存在していたかも知れません。 でも、まだ一般的ではなく、若い私達は知りませんでした。
その紙おむつの実験の思い出です。古い話ですが・・・
化学反応時の温度条件、触媒や薬品の量などを変化させて、 出来上がった各物質の吸水力、保水力を測定する仕事のことです。
紙おしめと同じような条件に近付けなければいけません。
その時は、晒で作った10センチ四方くらいの布袋に 1グラムのその物質(粉末)を入れて口を閉じ、水の中に放り込み、 一定時間置くという方法でした。
それは、グングンと水を吸収して膨潤し、布袋はパンパンに膨らみます。 袋ごと重量を測定して、何グラム吸水したかを調べます。
「でも、水を吸収するだけではダメや。 赤ちゃんは暴れるからな。座ったときには赤ちゃんの体重がかかる。 その条件下で、いったい何グラムの水を保水できるかだ」
ということで、水を吸収して膨らんだ布袋を、 洗濯機の脱水装置に一定時間入れて遠心力をかけ、 その後の重量をいちおう保水力としました。
反応時の条件を変えると、面白いほど、その物質はグングン吸水しました。 脱水機にかけた後でも、かなりの保水量を保っていました。
これなら、赤ちゃんのオシッコをじゅうぶん吸収して 赤ちゃんが暴れても座っても、オシッコは一滴も漏れないかも知れない、 すごい!! と思いました。
実験は次の段階に入りました。
赤ちゃんのオシッコは蒸留水でも水道水でもないのです。
えっ! 今度は水ではなく、オシッコを吸収させるんですかぁ?
いいえ、次の段階で、水から生理食塩水に変わりました。
結果は・・・
ガタガタガタっと、吸収量は激減。 ガックリでした。
水だとあんなに大量に吸収したのにー
残念ながら、その頃、私は産休に突入、そして退職しました。
会社から支給されたLLサイズの白衣や耐薬品性のズボンは もう、はちきれんばかりでした。
私のような者でも母親になりました。 子育てをしていた頃に、優秀な紙おむつや生理用品のコマーシャルを見ると 「あっ、アレやわ、アレが入ってるんやわ」なんて独りごちました。
今では、もう既に過去の物になってるのでしょうけれど。
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