ちょっと昔の話ですが、 今でも、時々思い出して笑ってしまう、私と義母との会話です。
某宅配便の事務所でアルバイトをしていた頃のこと。 定年後、会社から依頼された義父が、管理していた職場でした。
朝、義父から、「ハイ、おばあちゃんから」と言って、キュウリを渡されました。 畑で採れたばかりのデカキュウリが、五、六本、入った袋です。
せっかくの義母から貰った採れたて新鮮野菜、 なのに私は事務所の机に置いたまま、忘れて帰ってきてしまったのです。 車で三十分か四十分の事務所、わざわざ取りに戻るのもちょっと面倒でした。
まあ、いいや、明日も行くのだから、と思っていた矢先に、 義母から電話がかかってきました。
「あんた、まだキュウリ、もらってないんやろ」 なんだか深刻な口調。
(大げさやなあー キュウリごときで・・・)
「あっ、今朝、貰ったんやけど、私、忘れてきてしまったんやわ」努めて、明るく。
「えっ? どこへ?」と、びっくりする姑。
(もう、たいそうやなー、キュウリごときで・・・)
「机の上に置いてきたんよ」明るく、明るく。
「ええっ! なんで、机の上に置いたん。すぐにカバンの中に入れんとアカンで!」
ちょっと、怒ったような感じ。
(もぉ〜、大げさなんだから・・・ キュウリごときでぇー)
「でも、私のカバン、入れへんし・・・」
「えっ、そんな、小さなカバンか!?」
(財布とハンカチとティッシュだけ入れてる、バッグなんやけどなあ)
「カバンに入れへんのやったら、机の引き出しにでも入れなアカンやんか!」
ちょっと、声が高くなる義母。
(引き出しに、キュウリを入れるのもなあ・・なんだかなあ・・)
と、そこまできて、やっと、やっと、私は気付いたのです。(鈍感かも・・・)
私はキュウリのことを言い、義母はキュウリョウ(給料)のことを言っていると。
たしかに身内の気安さからか、義父は私のアルバイト代を時々忘れてしまい、 その時も、何日か過ぎていました。
それを知った義母が、私がお給料を受け取ったかどうかを気にして、電話をくれたのでした。
私は、自分の忘れてきたキュウリのことばかり思い、 義母は支払い忘れている、お給料のことばかり思い、
しばらく、平行線の会話が、トンチンカンに続いたのでした。
バッグに入りきれないほどのお給料、欲しかったなぁ
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