頻繁ではないけれど、宅配便をよく利用する今日この頃、 某宅配便の事務所でパートをしていた頃の思い出話。
年末、一年中で一番忙しいこの時期、いつもは暇な宅配便事務所も、 臨時の配達員や仕分け人アルバイトが右往左往し、 倉庫には、山のような荷物が積み上げられ散乱している状態だった。
でも、荷物を満杯に積み込んだ車が、みんな出払った後、 事務所の中は、急にガランとなり、私と上司(親類の人)だけになる。
忙しい上司は、いろいろな所用で走り回っていることが多く、 事務所の中は、たいてい私ひとりが留守番だった。
「みんなで外に出て待ってるのに、約束の時間になっても荷物が届かない!」 と、怒りの電話があったのはそんな時。
担当地区の配達員は当然、もう出発している。 道路状況や諸事情で、配達時間がずれることは多い。 携帯電話のような便利な道具は、当然まだ一般には存在しなかった頃、
(小荷物をわざわざ外に出て、みんなで待ってるなんて?? 変なの・・)
「すみません。もう少しすると届くと思いますが」と言う私に、相手が突然、凄んだ。 (言っとくけど、ちゃんと申し訳なさそうに返事をしたよ。)
「もう少し待ってたら、来るんやな!! けえへんかったら、そっちへみんなで行かしてもらう!! 男を電話に出せ! そこの場所を教えろ!!」 独特の口調だった。
そこへ、運良く(?)、相手のお望みどおり、ふらりと男が現れた! 事情を急いで説明し、無理やり電話を押し付けられた不運な彼、
しどろもどろに応対して、ここの場所を説明だけすると、電話を切り、 なんと「ゴメン、悪いけど、忙しいから」と、逃げるように行ってしまった!
たしかに、出入り業者的存在の彼は、私達とは仕事上、直接関係はない。 しかも、若くて、とても小柄で華奢で、羨ましいほど色白で、 どうみても私より、か弱く、なよなよしい。
こわ〜い人達が押しかけてきたら、どうしよう・・・ ○○さん、早く荷物を届けて〜。
古い大型の倉庫が並ぶ、だだっ広い敷地には、たいてい誰もいない。 その片隅にある宅配便のちっぽけな事務所、すぐそこまで海が迫る。 倉庫の事務所は遠く、滅多に行った事がないし、私とは交流もない。
その当人の配達員が昼食のため戻ってくるまで、 一人、寂しい事務所の中で、不安な時間を過ごしたのは当然のこと。
「ええ? ちょっと遅れただけやけどなー」と、配達人。 「みんなで外で待ってた? 物凄く怒ってたでしょう?」 「いいや〜、べつに〜」 「・・・・・・」
今から考えると、あんな寂しい場所でよく留守番していたなーと思う。 誰からも目に付かない場所で、お金も無さそうな粗末な事務所だったが、 留守で持ち帰った小荷物、配達日指定の荷物などが、置いてあった。 若くは無いが(でも今よりは遥かに若い三十代)女事務員が一人で留守番してたのよ!
今は、埋め立てられ、大型マンション群とショッピングモールが建ち、 すっかり変わってしまったあの周辺、 昔の古い大型倉庫、ちっぽけな粗末な事務所は、今では、移転して近代的になってることだろう。
古くなって行くのは、人間ばかり也。
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