Rocking,
Reading, Screaming Bunny
Far more shocking than anything I ever knew. How about you?
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*名前のイニシャル2文字=♂、1文字=♀。
*(vo)=ボーカル、(g)=ギター、(b)=ベース、(drs)=ドラム、(key)=キーボード。
*この日記は嘘は書きませんが、書けないことは山ほどあります。
*文中の英文和訳=全てScreaming Bunny訳。(日記タイトルは日記内容に合わせて訳しています)
*皆さま、ワタクシはScreaming Bunnyを廃業します。
9年続いたサイトの母体は消しました。この日記はサーバーと永久契約しているので残しますが、読むに足らない内容はいくらか削除しました。
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フレドリック・ブラウン著"Deep End"読了。ブラウンは全部読んだつもりでいたが、これ1冊を読み逃していた。(2006年に米古書店に注文したが在庫切れ) なので先日アメリカの古本屋から購入。日本語訳はない。 1952年という初期の作で、私の名前の元となった"Screaming Mimi"(1949)や"Here Comes A Candle"(1950)という衝撃的な作品からわずか2、3年後であるが。 ブラウン唯一の駄作だと思う。 筋の運びが雑だ。主人公が「事故」に疑いを抱く理由はいい。だがその単なる不審が確信に至るプロセスが無理やり過ぎる。説得力を欠くというレベルではなく、単純に主人公がパラノイアに思える。実際、己の妄想を確認したいという理由だけで家宅侵入までしてのける彼は、立派なパラノイアと言っていい。 伏線のラヴストーリーが、伏線にすらなっていない。見栄えを水増しする添え物だ。彼が妻の留守中に恋に落ちる女性の存在は、結果的には不必要どころか雑音だ。また彼の彼女に対する愛し方は見ていて不快である。 最後にいきなり恋が終わり、いきなり事件の真相が明るみに出るのは、まるで連載小説が突然打ち切りを告げられて「巻きに入った」かのようだ。 私は実はこれをずっと、異常心理を味わう小説かとすら思っていたのだ。そうでないとなれば、この主人公は単に自己を客観視出来ないクズでしかない。 最初から繰り返し現れる暗示的な蝿の記述も、取ってつけたようで陳腐だ。事件の真相がわかっても、最も大切である筈の心理的背景は一切わからず(主人公の妄想が正しかったと推測するしかない)、カタルシスがないどころか不満がつのる。
しかしそれでも、この文章のトーン。フレドリック・ブラウンだとすぐにわかる、知的でいながらもチープで、残酷である場合にすら子供っぽいセンチメンタルさを失わない、少し夢見がちな文章は、一冊を後悔させないだけの力はある。 (12/14up)
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