けろよんの日記
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図書館では2桁どころか3桁の順番待ちであろう、 有川浩新作。
こういう本は所蔵数も増やすので予定より早めにまわってきた。 「3匹のおっさんふたたび」より早かった。
「ストーリー・テラー」でどん引きした後 「県庁おもてなし課」で鼻白み。 「ヒア・カム・ザ・サン」でちょっと見直し。
と、好きだから嫌いなのか、好きが転じて嫌いになったのか ちょっと自分でもよく解らない。
さて、航空自衛隊の売り込みを基に書かれたというこの本。 自衛隊入門が「抜かずの剣は平和の誇り」 「ファントム無頼」by新谷かおるでありましたので、 同組織に対しては抵抗感があまりありません。
にしても、巷で自衛隊プロパガンダ小説と書かれるのも 致し方ないかもしれない、、、と思いませり。 だってなー、組織としての悪いとこまーーったく書いてないんだもん。 組織が組織として存在する以上、いい人がたっくさんいても システム上の不合理とか、歪みとか、なんやかしあるでしょう? (ついこの間もリンチがあったみたいな記事読んだよ?)
「県庁おもてなし課」の時の執拗な駄目出しに 比べてエコ贔屓強すぎ。
もともと、そういう組織を描いてメジャーになられた方だし 思い入れが強くあるのは解るのだけどれども、 ヒイキの組織に対しての甘い(のみ)の目線。 それ以外への厳しい目線の格差があまりにもありすぎる。
自衛隊は今でも各方面から叩かれる存在なのか? どうしたって嫌われるからこれだけ擁護しなければならないのか? 実際のところ、知らないことは沢山あって、どんだけ 頑張ってくれてる人が沢山あるか、隊員としての意識に ついても多いに知ることができたよ。
なんだけど、450頁超という厚さなのに、 登場人物の存在感が感じられなかった。「小説」としても。
おそらく、作者が多少の距離感を持って描いている 女性整備士が一番好感を持てた。というのは冷たすぎるだろうか?
途中で自衛隊のCMに対して、ホームレスの就職支援団体の 主導者が批判を行うシーンがある。
「アメリカなどで貧困のために選択の余地がない人々を軍隊に スカウトする例があるが、ついに日本でも同様のことが始まった のかと慄然とした。」 (P333)
とある。 その後CMの内容自体も捏造ではないかと疑う。
それに対してヒロイン(テレビ局勤務)は憤る。 「…まさか帝都の番組でも同じ調子で腐すなんて。 アメリカの社会問題を聞きかじって知識をひけらかしたいとしか 思えません。」
貧困層のスカウトって、堤未果の「貧困大国アメリカ」 で読んだなー。
なんちゅーか、いやいやいやいやいや。 上手いこと就職支援団体の主導者を敵役にして、 自分たちの広報が足りないからと主人公たちを 節度のあるいい人に描いているのですが。
世間ってそーんなもんなんですかね。
なんだかなー、どうだかなーとすっきりしなくて、 肝心のお話自体が楽しめませんでした。
自衛隊の方、この本を読まれて本当のとこどう 思われるのでしょうか?
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