Jacarandaの日記
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2004年09月15日(水) |
鳥インフルエンザのワクチン開発 |
『 鶏用H5N1ワクチン開発 北大が国内初、備蓄目指す 』 というニュース。
今年、2月から3月にかけての国内での鳥インフルエンザ発生では、
養鶏産業や消費者を震撼させたことは記憶に新しい。
国内の発生は、今のところ終息しているが、東南アジアでは再流行している鳥インフルエンザ。
この鳥インフルエンザの原因ウイルス(H5N1型)の鶏用ワクチン試作品を、
北海道大学獣医学部の研究室のグループが、開発に成功したという。
3年後をめどに、製造、備蓄を目指しているそうだ。
鳥インフルエンザ対策は、発生後は、発生農場の鶏を全処分して
感染拡大を防ぐ方法《摘発淘汰》を取っていて、ワクチン接種は行われていない。
しかし、今年の感染の猛威により、2月にはFAO,OIE,WHOの三機関が、
鳥インフルエンザに対する動物ワクチン使用はウイルスの広がりを防ぐ
摘発を含む多くの方策の中の一つの選択肢だと発表した。
ウイルスの完全制圧が困難な場合、ワクチン接種を選択肢として検討されている。
家畜には、「家畜伝染病予防法」という法律があって、畜産農家は、その予防法の指針に則って、
ワクチン接種等の予防措置を実施する。
( 鳥インフルエンザは、法定伝染病の中では、”高病原性鳥インフルエンザ”に位置づけられる。
古くは、”家禽ペスト”と呼ばれていた。)
しかし、この鳥インフルエンザに関しては、
ワクチン開発がまだまだ確立されておらず、安全であることが証明されていないため、
( 生ワクチンの場合は、ウイルスが生きているため、感染力が残存している可能性があることと、
病気の発生を疑う場合、抗体検査を実施した結果に、ワクチン抗体の(存在)上昇か、
野外感染なのか区別が困難であるため、予防法では認められていないのである。)
今回の北大でのワクチン開発は、獣医微生物学教室の喜田 宏教授らが、
カモから分離したH5N2型とH7N1型のウイルスの遺伝子組み換えによってH5N1型ウイルスを作りだし、
これを不活性化してワクチンにした。
ワクチンの効果を見るため、鶏の皮下注射や鼻腔(びくう)内噴霧という方法で、ワクチンを接種し、
その約5週間後、今回大量発生した山口県の鶏から検出されたH5N1型ウイルスに感染させた。
その結果、皮下に接種した8羽のうち7羽、鼻腔内接種の8羽では4羽がインフルエンザの発症が見られず、
ワクチンの効果が確かめられたそうだ。
---(共同通信) - 9月13日参考---
世界保健機関(WHO)の尾身茂・西太平洋地域事務局長は
アジアで再発している鳥インフルエンザについて、
ウイルス(H5N1型)が想像より広い範囲に伝染していると指摘しており、
「拡大防止の取り組みを強化しなければ、大流行する可能性が高い」と警告したという。
一方、このワクチンに関して、特筆すべき記事を見つけた。
『 政府と養鶏農家、鳥インフルエンザ対策で意見が対立 』
という見出し。
政府と養鶏産業組織(養鶏協会)が鳥インフルエンザワクチンの使用をめぐって意見が対立しているという。
「政府と研究者たちは養鶏農家の追い込まれた立場を全く理解していない」
「 農家が充分な補償を受けられないで、発生を防ぐためのワクチンを許可されないというのは不公平です。」
という。
鳥インフルエンザワクチンは、既にメキシコ、イタリア、ホンコン、中国等の国々で使われている。
しかし、政府はワクチン接種は発症とその強さを弱めるだけでウイルスは発見されずに広がるであろう、
と主張して反対している。
主な論点は、発症を抑えて、経済的被害を少なくするという養鶏業者の立場と
農水省(政府)側の”ウイルスの根絶を目指している”という姿勢とのちがいである。
( 前出の )養鶏協会は、もう既に豚や馬ではインフルエンザワクチンが使われ続けているのだから、
鶏にも当然承認されるべきである、と政府の姿勢を非難している。
一旦病気が発生した場合、その農場はすべての鶏を淘汰しなければならないため、
養鶏業界サイドは、ワクチン接種がこのような経済的負担から
養鶏農家を守ることが出来る選択肢だとする見解を持っている。
--- 2004年5月5日付 THE DAILY YOMIURI より抜粋 ---
人間への感染例も出ている鳥インフルエンザ。
今年始めの日本の大量発生の恐怖、及び消費者の混乱を思い出し、
今後の安定したワクチン供給の製品化のために、
行政と産業界との防疫対策のスムーズな連携を期待している。
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