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2005年04月22日(金) |
深い人間ドラマ(白い巨塔) |
山崎豊子『白い巨塔』文庫版全5巻読了。 大作だけに、感想も大作になりそう(こらこら)。 なるべくさっ引いて書こう。
読み始めた頃の感想。 慇懃無礼って、こういうことか〜。と、変なとこに納得。 いやあ、慇懃無礼ってよく言うけど、本物は初めて見た気がした。 ビジネスマンには、ある意味重要な参考書になるのでは。 ま、妙な裏取引とか覚えちゃいかんけども。
半ばの感想。 山崎豊子の文章、わかりやすい。 なぜか、それは、解説付きだからだ! 会話での話運びが巧みな山崎豊子。 でも、選挙やら裁判やらが題材になっているので、 当然、会話には「含み」が多い。 でも、会話の後に「○○らしい政治的意味を持った言葉だった」とか、 「自分の権威を見せつけつつ、下手に出た」とか、 今の台詞にはこーゆー意味が、効果があるのよ、という解説が、 地の文によく書かれているので、とってもわかりやすい。 映像じゃなく、文章だからなせる技だね。
読了後の感想。 続編(4・5巻)があってよかった! 3巻では医療訴訟(誤診訴訟)で患者側が負けるとこで終わりだけど、 そりゃあんまり。 と、発表当時も声があって、続編が書かれたらしいけど、 最後に患者側一部勝訴になるところが、実にドラマチック。 財前に非があったことを、読者はみんな知っていての展開だから、 これで溜飲が降りる。 もし仮に、これで一審から患者側勝訴だったら、 さすが小説のご都合主義ね、って感じだけど、 二審で一審の医者側完全勝利を覆しての患者側勝訴ってのがいい。 医療訴訟はまだまだ難しかった昭和50年代に発表された続編、 ということは、たぶん現実世界では同じケースは敗訴だったかも。 それを勝訴に持っていったのは、小説だからなしえたことかもしれないけど、 小説という仮の世界だからこそ、そうすべきだった、とも言える。 何も、ホントの本当の現実に則さなくてもいいわけだからね。
それから、主人公であり悪役である財前五郎。 彼はしかし、根っからの悪人とも思えず、 最期のシーンでは、なんとか救いたいという医師団に共感する。 医療の現実の暴露ではなく、人間ドラマを書きたかった、 とは作者の弁だが、まさに、人間財前五郎のことを思うから、 ラストシーンに深い哀れを感じるのだろう。
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