mortals note
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「とりあえず入ってみるかね。中を確かめてみないことには何も言えない」 よっこいしょ、と掛け声をひとつ。サイジョウは立ち上がった。 言われもしないうちにてきぱきと、ステフが端末を片付け始める。まるで世話女房のようだ。 ひ弱にしか見えない、全国指名手配中のテロリストの頭目は、まるで隣の部屋に移動するような気安さで洞穴にもぐりこむ。 レイとハルトはお互いにを見合わせてから、頼りない背に続いた。
―――ねぇ、もう帰ろうよぅ。 圧迫感のある狭い岩壁にはさまれながら、レイは幼い子供の声を聞いた。 半べそなのは、自分だ。まだ孤児院で暮らしていたころの。 十年以上も前の話だ。今も目の前を歩いている幼馴染の腕を、後ろから必死に引っ張っていた。 ―――ばっか、ここまで来て帰れるか! ハルトは振り返らなかった。鬱陶しそうに、絡みつくレイの腕を振り解く。 早く荒野を出て帰途に着かなければ、孤児院に戻る頃にはとっぷりと日が暮れてしまうだろう。 シスターたちに心配をかけるのは嫌だったし、何より、怖かった。 しかし、この幼馴染は一度好奇心に火がついてしまうと止められないのも、レイはよく知っていた。 レイが帰る、と言ったところで、彼は一人で残るだろう。ほうって帰るわけにもいかなかった。 そうだった。あの日、確かにこの細い洞窟を進んで、その先にある遺跡にたどり着いたのだ。
ぼんやりと、闇の果てに白いものが浮かび上がる。 それが、わずかな光を跳ね返す鋼鉄の扉なのだと気づくまで、時間は要らなかった。 現代の科学をはるかに超越した、古代文明の遺跡。ファレスタ山脈で発見した、伝説の聖遺物、
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