草原の満ち潮、豊穣の荒野
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31 就任前夜(2)Breed ,Blood ,Blue

オレは時々自分がわからなくなる。

ヤク中かって?
その逆だ。
いや、それとも天然か。

ガキの頃にこびりついた記憶。
そいつにオレは振り回されっぱなしだ。
そいつがオレをどこかに追ん出す前に
オレは酒や薬で押えつける。

爆発しそうなエネルギーの塊。

なあ、あんた、ヒトって喰った事あるかい?
愉快だぜ。
血反吐を吐いて
最後まで喚き散らすんだ。
魂が騒ぐぜ。


そうしかめっ面すんなよ。
あんたらのほら、すぐうしろさ。
血や臓物なんかまき散らさなくたって
ヒトを喰って生きてる奴らは
ごまんといるんだぜ。


哀れな獲物は喰われても喰われても
終わりがねえ。
オレには見えるンだよ。
豚が人の姿をして獲物を探してるのが。
奴らは腹が一杯になる事はない。
口先では上品な建て前ばかり並べてやがるがね。
いつも空腹でそのへん窺って歩き回ってる。


オレには見えるんだ。
あんたの後ろで真っ赤な舌を垂らして
笑ってやがる。


オレが喰った時はもうそこで終わっちまった。
そいつは骨や汚物のカスになって二度と
立ち上がってこなかった。
オレも満腹でそれ以上欲しくなかったさ。

オレは獣だ。
人じゃない。
種族やら血統やら複雑に入り組んだだけの
獣だ。親父もおふくろも知らねえ。

皆は喰うな、と止める。
オレも酒を飲んで下品な冗談を飛ばす
相手がいないのは嫌だぜ。
あの時は奴がオレを喰いにかかってたんだ。
だから反対に喰ってやった。
降りかかる火の粉くらい払うさ。


オレには獣の血が流れている。
種類だの血統だのは全く
どうでもいい事だ。
喰って腹を満たす。
命を奪って魂を燃やす。
そしていつか野垂れ死ぬだけだ。


いつからだ。
ヒトがヒトを血を流さずに喰い漁るようになったのは。
獣も驚くぜ。
腹の中に獣どころかバケモノを忍ばせて笑ってやがる。
ゲップを吐いてニタニタしてやがる。



オレなんざ全部、吐いちまった。

やわな獣はどうやって生きていけばいい。
荒野へ走り出してしまいたい衝動を堪える。
自由に殺戮に生きる獣であったなら。







オレはこんなに悩まなくったってすむんだ!!






















次回はまとめのためお休みとさせて頂きます。
その間、外伝的な童話を一本予定しています。