ぶらんこ
index|past|will
空襲が来る、と言う。 ひとり一丁ずつ武器を与えられる。わたしの隣の女性は小型銃。わたしは猟銃のような銃。弾は一発のみだ。
空襲時、武器を持って応戦せよ、という指令だった。これで生き延びることは難しいだろう。死の覚悟を決める。
戦闘機は銃をあちこちに発射させながら進んでいた。そこらじゅう、噴煙があがる。 一発しかない弾を使うべきかどうか、、、狙いを定めようとするのに、手が震えてどうにもならない。 当たるわけがない、と思っている。どうせ当たらない、そして死ぬ。 ならば当たらぬことなどどうでも良いじゃないか。弾がなくなろうがどうしようが、どうにもならないじゃないか。
いつの間にか空襲は終わったらしい。辺りには死体が転がっている。わたしは生き延びたのだ。
拡声器を持った市の職員が、生存者の確認をしている。 わたしたちのグループのところへもやってきた。チラシの束を手渡しながら、生存者の名前を帳簿に付けている。 なぜそんなことをするのだろう。不思議に思っていると、与えた武器の回収も同時に行っていることを知った。 弾を使っていなかったわたし。あの猟銃だけが頼りだ。
市職員が去った後、絶望的な気持ちになる。 死んでしまったほうが良かったのかもしれない。またこうしてひとりでいるなんて。
ふと、携帯電話があったことを思い出した。 そうだ、鞄の中に入れたままだった。まだ間に合うかもしれない。姉たちに連絡をしなくては。
鞄を開けると、貴重品が納められていた。ささやかだけれど、銀行口座の証明とか。あと、指輪。 もう随分前にはずしておいた指輪だったが、死ぬときには一緒に死にたい、と思った。 そっと指輪をはめると、指より大きくてごろごろ回る。でも、いいのだ。ひとりで死ぬのではない。 そんな気持ちになって少し気分が上向きになる。
姉3に電話をかける。出てくれ、頼む、と願いながら。 姉は驚いた様子で電話に出る。もしかしたら周囲に誰かいたのかもしれない。 最初は戸惑った、ぎこちない対応だったが、その後に「ずっと連絡しとったのよー」と言った。 こちらも、誰かに聞かれて携帯を取り上げられるのではないかという心配があり、手短かに話そうと努力する。 とにかく、言いたいことを言わねばならない。
明日、また空襲がある。自分は今度は死ぬと思う。口座の残金は、姉ちゃんたちが管理して娘のために使ってくれ。 これまでありがとう。本当にありがとう。もう一度会いたかった。
姉2にも電話をかけ、同じようなことを言う。 姉2は、ちょっと待って、今からでも遅くないから、こっちに来なさい。荷物をすべて持って。昼間のうちに。 何、バレやしないよ、大丈夫。こっちに来なさい。
あぁそう出来たら、、、と思う。心からそう思う。でも難しいだろう。 しかしどうだ。どうせもう死ぬのだ。なら、どう死んだっていいじゃないか。姉たちのところへ行ってみよう。それで殺されたらそれでいい。
最後に母にも電話をかける。
そっちに行くからね。待っててね。
・・・・
恐ろしい夢だった、、、本当に怖かった、、、、
|