ぶらんこ
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昨日こころさんは「親知らず」を抜く手術を受けた。
抜歯(しかも4本!)を薦められたとき、彼女は「怖いから眠らせて欲しい」と歯科医に訴えたらしいが、それはいとも簡単に快諾された。 というか、この国ではごくごく普通のことらしい。 実は全身麻酔というのに(わたしは)ちょっと抵抗があった。が、これは日本人特有のものなのかも。 苦痛に対する考え方(捉え方)がまだまだ欧米人のそれに及ばないところがある。何ごとも我慢は良くないのにね。
ともかく全身麻酔下というのがわかってからは、気持ちを切り替えた。何より受けるのはわたしじゃない、こころさんなのだ。 こうなると、ムクムクと好奇心が湧いてくる。 手術室で働いていたから、全身麻酔というのは普通の人より身近である。が、わたし自身は全身麻酔を受けたことがない。
「全身麻酔して貰ったらさ、どんななるかね?」 「どういう意味?」 「いや、ほら、強制的に眠らされるわけでしょう。・・・そういうときってね、体外離脱、しやすいらしいよ」 「えっ!?」 「夢のなかで、虹の橋のほうまで・・・ぷーちゃんに会いに行くといいよ」 「うん!」 「ぷーによろしくね。でも、ちゃんと身体に戻ってくるんだよ。行ったままじゃ困るからね」 「わかった!」
手術前にそんな打ち合わせ(?)をして、とうとう彼女は呼ばれて行った。 わたしは待合室でじっと待つこと・・・約2時間。 パラパラと雑誌をめくっていたが、わたしのほうも睡魔に襲われた。少し眠るか。。。ぷーちゃん。。。
目が醒めたとき、左手が痺れていた。左手に顔を乗せて眠っていたせいだ。 もうそろそろ手術も終わるだろうか。ウトウトと夢を見ていたような気もするが、ぷーちゃんに会った記憶はない。 こころのほうはどうだったろうか。
呼ばれて中へ通されると、顔がパンッパンまんまるに腫れたこころが毛布に包まれて座っていた。 赤ちゃんの頃の顔と同じだ・・・と、驚いて、ちょっと笑えた。ガーゼを噛まされてるせいもある。痛々しい。 でも、なんだか久しぶりにちんこいかわいい彼女に会えたような気がして嬉しかった。
「で?どうだった?」 「良かった。痛くなかったよ。途中で起きたけど」 「そうなんだ」 「Laughing gas は全然効かなかったよ」 「それ吸うと笑っちゃうガスってわけじゃないんだよ?」 「わかってるよ!で、その後に注射されて、しばらくしたら・・色んなcolorが見えて・・・」 「ええ〜!凄い!それでそれで?ぷーに会えた???」 「・・・いや」 「なんだ、会えなかったのか、、、残念、、、」
駐車場に向かいながら、ふと、よろよろと後を付いてくるこころさんに気付き、ごめんごめん、と手を取った。 「大丈夫?一応、エスコートしなくっちゃね」 「そうだよ〜もっと優しくしてよ〜」
まさに、子の心「親知らず」。
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