ぶらんこ
index|past|will
フェリーに乗った。 大きな翼の鳥が海面ぎりぎりのところを飛んでいた。 彼は、ときにその両足を下ろし、海面から水しぶきをあげて、遊んでいる。 えさを採っているんだよ、と、近くで誰かが言ってたけれど、わたしは密かに、違うよ。。。と、思う。 あの鳥の気持ちがわかる。 すごいスピードで水を蹴る。何度も、何度も。その軌跡を見せるために。 もっと速く。角度を変え、場所を変え。 そして空へ飛び立つ。自分の影を見るために。海がその姿を見せてくれるから。 ほらね。あれは遊んでいるのだよ。と、わたしは勝手に決め付けて見ている。
時間があったので、本屋に寄った。 ハードカバーの本が死ぬほど好きなのだけれど、お金が勿体無いので、もっぱら文庫本ばかり買っている。 その文庫本を買うのからも最近遠ざかっていたのだけれど、本を読もう!と思い立ってからは、なんだって買いたい気持ちだから不思議だ。 欲しかった本を見つけ、その後は、そこいらの本をぼんやりと眺めていた。 目に飛び込んでくる本があったら買おう、と思って。 手に取り、棚に戻し、をくり返していくうちに、1冊の本が目に入った。 パラパラとめくり、作者を見る。 鹿児島出身。 単純にもそれだけのことに運命的なものを感じ、同じ作者の本を2冊選んだ。 文庫本とはいえ、この衝動的な買い方に、ちょびっとだけ罪悪感を感じる。 だけど、良いのだ。 今は多くの本を読みたいから。
レジに向かって歩いていると、「幸福になる方法」とかなんとかいう本を見つけた。 何万部も売れているらしい。知らない作者。でもわたしが知らないだけで、きっと高名な人なのだろう。 「幸福を自分のところへ引き寄せる方法を教えます!」などというようなことが表紙に書かれてある。
ふ〜〜〜〜〜ん。。。と、思う。 幸福ねぇ。。。と、思う。 引き寄せるねぇ。。。と、思う。 そして、 余計なお世話じゃぃ・・と、思う。
このような類の本に、わたしは非常に懐疑的だ。 違う。いろんなことに対して、わたしは懐疑的なのだと思う。 いつも、まずは疑う。冷めた目で。だから、何よ。という感じで。
「さぁ、自分に自信を持って!」と書いてあった。 自信なんてなくたって良いよ、と、変な自信を持ちながら、その本を戻す。
きっと、わたしはすごく傲慢なのだろう。 そして、根性がねじれているのだろう。
相田みつを氏の言葉も、正直なところ、最初は「嫌悪」に近いものを覚えた。(これは、以前にも書いたことがあったと思う) こんなことを言うと、ますます、自分という人間が酷い人に思えてくる。
今は、そうでもない。彼の詩を読んで、 なるほどなぁ。。。と、思う。 すごいなぁ。。。とも、思う。 綺麗だなぁ、とも、ありがたいなぁ、とも、あぁそうだったんだなぁ・・・とも、思う。 素直に、素晴らしい人だったんだぁ。。。と、思う。 そして、一時的とは言え、嫌悪していた自分を恥じてもいる。
それでも、心はこう思っているのだなぁ。。。 「でも、自分で決めるからいいよ」 ―それで良いような気もする。
夜の海はまったくの黒だ。 遠くの連なった灯りたちが、陸であることを示している。 こころが黒い海に浮かぶ白い波しぶきの写真を撮っている。 わたしが昼間したこととおんなじことをしているので、可笑しい。
ふたりで黒い海を眺めていた。 考えてることは、それぞれなんだろうけれど、こういうのって、良いなぁ。。。と、なんだかしあわせな気持ちになった。
|