ぶらんこ
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2004年11月07日(日) こころが帰ってきた

フェリーに乗った。
大きな翼の鳥が海面ぎりぎりのところを飛んでいた。
彼は、ときにその両足を下ろし、海面から水しぶきをあげて、遊んでいる。
えさを採っているんだよ、と、近くで誰かが言ってたけれど、わたしは密かに、違うよ。。。と、思う。
あの鳥の気持ちがわかる。
すごいスピードで水を蹴る。何度も、何度も。その軌跡を見せるために。
もっと速く。角度を変え、場所を変え。
そして空へ飛び立つ。自分の影を見るために。海がその姿を見せてくれるから。
ほらね。あれは遊んでいるのだよ。と、わたしは勝手に決め付けて見ている。




時間があったので、本屋に寄った。
ハードカバーの本が死ぬほど好きなのだけれど、お金が勿体無いので、もっぱら文庫本ばかり買っている。
その文庫本を買うのからも最近遠ざかっていたのだけれど、本を読もう!と思い立ってからは、なんだって買いたい気持ちだから不思議だ。
欲しかった本を見つけ、その後は、そこいらの本をぼんやりと眺めていた。
目に飛び込んでくる本があったら買おう、と思って。
手に取り、棚に戻し、をくり返していくうちに、1冊の本が目に入った。
パラパラとめくり、作者を見る。
鹿児島出身。
単純にもそれだけのことに運命的なものを感じ、同じ作者の本を2冊選んだ。
文庫本とはいえ、この衝動的な買い方に、ちょびっとだけ罪悪感を感じる。
だけど、良いのだ。
今は多くの本を読みたいから。


レジに向かって歩いていると、「幸福になる方法」とかなんとかいう本を見つけた。
何万部も売れているらしい。知らない作者。でもわたしが知らないだけで、きっと高名な人なのだろう。
「幸福を自分のところへ引き寄せる方法を教えます!」などというようなことが表紙に書かれてある。

ふ〜〜〜〜〜ん。。。と、思う。
幸福ねぇ。。。と、思う。
引き寄せるねぇ。。。と、思う。
そして、
余計なお世話じゃぃ・・と、思う。



このような類の本に、わたしは非常に懐疑的だ。
違う。いろんなことに対して、わたしは懐疑的なのだと思う。
いつも、まずは疑う。冷めた目で。だから、何よ。という感じで。

「さぁ、自分に自信を持って!」と書いてあった。
自信なんてなくたって良いよ、と、変な自信を持ちながら、その本を戻す。


きっと、わたしはすごく傲慢なのだろう。
そして、根性がねじれているのだろう。


相田みつを氏の言葉も、正直なところ、最初は「嫌悪」に近いものを覚えた。(これは、以前にも書いたことがあったと思う)
こんなことを言うと、ますます、自分という人間が酷い人に思えてくる。

今は、そうでもない。彼の詩を読んで、
なるほどなぁ。。。と、思う。
すごいなぁ。。。とも、思う。
綺麗だなぁ、とも、ありがたいなぁ、とも、あぁそうだったんだなぁ・・・とも、思う。
素直に、素晴らしい人だったんだぁ。。。と、思う。
そして、一時的とは言え、嫌悪していた自分を恥じてもいる。


それでも、心はこう思っているのだなぁ。。。
「でも、自分で決めるからいいよ」
―それで良いような気もする。




夜の海はまったくの黒だ。
遠くの連なった灯りたちが、陸であることを示している。
こころが黒い海に浮かぶ白い波しぶきの写真を撮っている。
わたしが昼間したこととおんなじことをしているので、可笑しい。

ふたりで黒い海を眺めていた。
考えてることは、それぞれなんだろうけれど、こういうのって、良いなぁ。。。と、なんだかしあわせな気持ちになった。


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