SAY-TEN DAIRY 〜晴天日記〜

2005年07月15日(金) BLACK PARASOL WOMAN

はじめて会ったその女性は、
ひょんな事から出会ったその女性は、
黒い日傘を差していた。

年齢は・・・僕と同世代?
小学生のお子さんふたり。
この街からずいぶん離れた、
けっこう僻地に住んでるとの事(謎笑)。

年齢の割に(失礼)仕草が可愛い人で、
さらに頭がいい。
当意即妙な会話がポンポンと弾む。
慣れてくるとボケたり突っ込んだりしてくる(笑)。

この世代の共通の話題と言えば・・・
『響鬼』(爆)。彼女も大ファン。
次回は“紅くなる”から絶対観なきゃ!と意気込む。

「そう言えば、さっきおもちゃ屋さんで
『響鬼紅』の人形、見ましたよ」と僕。
「えぇ!まだTVに出ていないのに、もう出ていたの!」
驚く彼女。
少し紅の色合いが微妙なものだったが・・・。

もうひとつ、彼女とは共通点があった。
それは交通事故で、九死に一生を得る体験をしたこと。
そしてその事故の際に視力を大幅に落としたこと。

「僕もそうなんですよ、かつてこんな事がありまして・・・」
「えぇ!そうなんですか・・・」
しばらく考え込んだ後、彼女が言った
「でも、生きていたから、
こうして出会う事ができたわけですね。」
「・・・まぁ・・大げさに言えば・・・そうなりますわな」
確かにそうだけど・・・何か照れ臭かった。
では、これからは「強運ブラザース」ということで・・・(笑)

空の上に敷いた七色のカーペットの上に
寝転びながら、この街の姿を眺める。
行き交う人々、車の波、慌ただしい街のノイズ。
すべてがスローモーション。
すべてが音を無くして、モノクロームになる。
すべてが僕にとって、一瞬どうにでもよくなる・・・。

くだらない話に笑い転げ、
真剣な話に相槌を打ち、
励まし慰められ・・・。
僕の心の中に沈んだ澱が
ひとつひとつ溶けてなくなっていく。

「では、またいつか会いましょう・・ね」
日傘を僕に差しかけながら、しばらく歩く。
道の角まで見送ってくれた。
「ありがとう。また・・・」
振り返ると、
黒い日傘の下で
ニコニコ笑いながら手を振っていた。

もう一度振り返ると、
黒い日傘は、夏の日の蜃気楼のように
消えてなくなっていた。

夏の日の夢から覚めて
現実の世界に立っている僕がそこにいた。


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