泡沫の記
DiaryINDEX|past|will
昨日会ったばかりなのに、寂しいから電話をしてしまう。 相変わらず激務の彼は、T市にいた。 声を聞けるだけでも胸が熱くなる。
私の愛は幼稚的だと彼が言ったが、そうかもしれない。 いい歳をして、いつもいつも傍にいたいと思う。 束縛が嫌いな彼は、私を束縛してはくれない。 どうして私は好きになると破滅的に恋い焦がれてしまうのか?
「おまえ、○日はちゃんと開けとけよ」と言う。 私の誕生日にフランス料理を御馳走してくれる約束のことだ。 平日だし、仕事の忙しい彼のこと、きっと当日になって 延期になると私は密かに思っている。 彼が私の誕生日を祝ってやろうというその気持ちが 何より尊くて嬉しい。
今という瞬間は、止まる過去へと変わっていく。 私のいまの気持ちもやがて形は変わるのだろう。 その時々の最高の願いは、結局かなうことなく、 年月ばかりが過ぎていく。 理想は高く、現実は無残だ。
彼に引き寄せられて、彼の腕枕で眠りに落ちたあの瞬間こそが 実は最高の幸せな時だったのかもしれない。
|