オレンジの映画日記
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2004年10月12日(火) 【息子のまなざし】2002年/ベルギー・フランス


監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ
   リュック・ダルデンヌ
出演:オリヴィエ・グルメ       オリヴィエ
   モルガン・マリンヌ       フランシス

久しぶりにこんなシンプルな映画を見たなぁ。シンプルなだけに、
役者や脚本の資質がもろに前面に出てきていたと思う。この映画は
最近見た映画の中でもかなりすごい作品だった。ちょっと好き嫌い
は分かれそうだけど、僕は傑作だと思う。

職業訓練所の木工クラスを担当するオリヴィエの元にフランシスと
いう少年が院から送られてきた。淡々と指導を続けるオリヴィエだ
ったが、フランシスの行動をいつも監視している。実はフランシス
はオリヴィエの息子の命を奪った相手だったのだ・・・


全編通して BGMもなく話の起伏もなしに展開していく本作だけど、
だからこそ、主人公たちの複雑な感情や心の葛藤が余計に際立って
見えた。息子を殺した犯人を目の前にしながら、どうしてフランシ
スの指導をしているのかわからないまま、感情を押し殺して仕事を
続けるオリヴィエ。彼の『息子はもう帰ってこない』という悲痛な
想いと、『その犯人が社会復帰をしようとしている』ことに対して
の怒り?憤り?といったものが痛いほど伝わってきました。

クライマックスでは、どうしてこのタイミングで?って思うような
所でオリヴィエはフランシスにお前が殺したのは自分の息子だと伝
えます。それまで淡々と話が進んできたせいか、主人公の感情の表
れのように、そこから一気に話が展開していきます。逃げるフラン
シス。それを追うオリヴィエ。”話しをしたいだけなんだ”って、
そんな顔して迫られたら誰だって逃げるよというツッコミは置いと
いて、ついにフランシスを捕まえたオリヴィエだけど、結局どうし
ていいか分からなくなっちゃったんだと思う。フランシスを受け入
れたわけでもなく、家族が戻ってくるわけでもなく、ただただ悲し
みだけを受け入れた。

フランシスはオリヴィエに追いつかれて死を覚悟しただろうけど、
オリヴィエはそうしなかった。 5年間罪を償って、院を出てきたの
だからもういいだろうって心があったと思う。しかし、遺族の悲し
みが消えるわけではないことを知り、自分の犯した罪を背負う事を
受け入れたんじゃないかな。

相手の過ちを受入れる事。自分の過ちを受入れる事。相手の性格を
受入れる事。自分の性格を受入れる事。相手の病気を受入れる事。
自分の病気を受入れる事。いろいろあると思うけど、人間は全てを
受入れられるほど強くはないと思う。ただ僕は自分が大切に想う人
の全てを受入れられるくらいの強さを持った人間にはなりたいな。


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