プープーの罠
2006年12月13日(水)

螺子さん

福田さん的"クリエイター飲み会"は回を重ね、
だんだんと"キャリアアップのために転職した人"から
"淘汰されて辞めていった人"にまで触手を広げ、
ますます仲良しごっこになりつつある。

ヘタに"クリエイター"だの言われると苦笑いするしかないが、
仲良しごっこという点では、楽しい飲み会ではある。

しかしその波は"現役社員"にまで及び、
早稲田君にも声がかかるようになってから
私はいちいちさり気なくメンツを聞き出しては
はち合わせないよう、参加を遠慮するようになった。



ある平日、福田さんに突発で飲みに誘われて、
彼女的に題するなら"ご近所飲み会"、
それなら早稲田君は来ないし、と久々に混ざる。
メンツはいつぞやの
プログラマとシステムエンジニア。

システムエンジニアの螺子さんが
前回は辞めたばかりで無職だったが、
この度就職したらしく、そのお祝いだそうだ。

みんなでひとしきり飲んだ後、
平日ど真ん中
ということもあって早々に解散となり、
福田さんとプログラマは同棲しているので一緒に帰る。
(付き合っていることはうすうす勘づいてはいたが、
 同棲についてはこの時、本人達から初めて聞かされた)

残った螺子さんと私、
 二人でもう一軒どうですか
と誘われあぁいいですよと着いて行く。

螺子さんは、辞める前は別棟で働いていたので接点もなく、
百合ちゃんの元カレもとい犠牲者
という若干アレな印象の人でしかなかった。

百合ちゃんというのは入社2年目の世間知らずのお嬢さんで、
これっぽっちも仕事ができないがプライドが高く、
自称歌手ながら何故か制作会社で働いていた不思議な人だ。
(彼女は「メジャーデビューしたのでヨーロッパでツアーをする」と言って先日退職したが、
みんなに言いふらし宣伝していた"私のユニット"は、調べてみるとどうやら男性アーティストグループで、
彼女はクラブの知り合いのよしみでコーラスとして少し参加させてもらった
だけでメンバー気取りになってしまっていただけだったらしく、
これを書いている2007年7月現在、自称歌手の無職のまま埼玉でぷらぷらしているご様子)


彼女は城さんが好きだった
(尤も、割とのべつまくなし惚れっぽいのですが)
が、城さんは城さんでそこら中に手を出してるらしく
しかしそんな城さんですら彼女の据膳を食わなかった。

城さんにこっぴどくフラれた
その3日後に螺子さんと付き合い出したそれは
ちょうど去年の今頃で、
つまり彼女は
クリスマスまでに彼氏が欲しかった
のだ。

その後、彼女は自分の誕生日とホワイトデーが過ぎたら
あっさりと別れた。

螺子さんは気の良い人なんだろうなと少し
哀れに思った。
そういう人。


私は彼といつぞや話していた仕事の話をしようと思っていた
のだが、彼は別の目的があったようで、唐突に言った言葉はこうだった。

 花火の日の浴衣は浅田さんのが一番好みでしたよ。

あぁそういえばこの人もいた。
惨めったらしくて思い出したくもないあの日。

合コンによく行くらしいがそういう人達というのは
こういうフィクション臭い言葉が公用語なのだろうか。

あからさまに苦笑いしている私に、彼は続けて言う。

 よかったらクリスマス一緒に過ごしませんか
 寂しいですよ、そんなの
 それはそれで楽しいですよ、きっと。

この人は私のことを別にどうとも思ってないし
少なくともまったく興味が無かったのは明らかで
たまたま飲み会にいた
シングル同士
という以外何もない。
あからさまに焦り過ぎ。


そこまでして誰かと過ごさねばならないものかしら。


初めてマトモに会話をしたが、
百合ちゃんにひっかかったのではなくて
螺子さんも同じ考えだったんだなぁと知る。
案外、お似合いだったのかも知れない。


誰でもいいなら誰だってそう変わりない。


でも私は
この人とはいやだな、
と思ったのだった。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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