プープーの罠
2006年11月02日(木)

river

1ヵ月ほど前に、見知らぬ電話番号から立て続けに連絡があり、
最初は無視していたのですが、間違えやイタズラでもなさそうなので出たところ
昔働いていた会社の上司だった。

とても小さな会社だったので
私が働いていた頃も仕事が立て込んでくると
以前働いていた人に連絡して
(その多くは結婚を機に辞めたり、独立したり)
勝手知ったる即戦力として手伝いをお願い
していたりしたので、そういう類のことかと身構えた

けれど、内容は予想外のものだった。

会社は去年、解散したこと。
理由は、社長が亡くなったから。

「11月で1周忌だから、みんなで飲もうと思ってね。」

そういうことで、
仕事上がりに飲み会という名の追悼会へ向かった。

私はあまりいい辞め方ではなかったので
意外と覚悟がいることだった。
何せ葬式にも呼ばれなかったのだ。

けれど、
辞めて以来久しぶりに見た社長の遺族は
変わらぬ笑顔で再会を喜んでくれ、
奥様も娘さんも実に気丈でとても彼ららしかった。
そして思っていたよりずっと、子供がでっかくなっててびっくりした。
時間の経過が目に見える形で表れている。


そして数年ぶりに聞いたそれぞれの近況は
思っていたよりだいぶ壮絶な感じで、

私が最後にちょっとだけ面倒を見た新人君は、
入って半年ほど過ぎた頃、
自分のペースが遅くて残業になっていたことすら
すべて会社のせいにして訴訟を起こし
相当な賠償金なるものをもらって辞めたそうだ。

上司は会社解散後、そのまま鬱になり仕事をしていないらしい。
奥さんは今まで一度も働いたことがない箱入りの人で
ちいさな子供が二人いる。

 ともあれ皆が集まって嬉しいよ。

と、子供のようにはしゃぐ上司を見ているといたたまれなくなる。
これからどうやって生きていくのだろうか。


解散後、先輩方とお茶をして
先輩と言っても同じ時期に働いていたことはないので
顔は知っている
くらいの関係ですが、小さい会社ゆえに、
彼女達は辞めてもちょこちょこと来ていたし
私には同性の同僚がいなくて、
先輩はストーカー化、
後輩は恋人化
していたので、日常で女性に接する機会が乏しかったので
けっこうな親しみを感じていたりする。


彼女達は結婚をしていてそれぞれ
旦 那 が 鬱
だったりして、家に籠っているので
一家の大黒柱は彼女達であったりする。
実際けっこう深刻なのだろうが
少なくとも表面上は
ケロリとしているタフな彼女達を見て、
一方、自分の弱さにほとほと参る。
ケロリとしていられる状態ではないだろうに
それを感じさせないようにできるところが本当にタフだ。
逃げないでまるごと受けとめているところも。

些細なことで手を放し失ったものの大きさを思い知る。
一体あと何年後悔したら忘れられるのだろうか。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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