2006年10月01日(日)
ブルーフィルム
早稲田君は私と付き合いはじめた頃から ブログに趣味の写真を載せている。 ふと見せてもらった写真を それいいね。私もカメラをやっていたのよ そんなことを言ってからだった。
夜景の綺麗な港、 古い喫茶店のコーヒーカップ、 広い広い芝生に写る影。
レトロなカメラでとった独特の 色合いはとても興味深いものではあった けれど、その風景はあきらかに
彼女とどこかに行った時に撮った
もので、その相手は私ではなく前に付き合っていた子。 私はそれを見るのがあまり好きではなかった。
私と一緒にいる時にカメラを持ち歩くことは稀で 会社帰りにそのまま来るのだから持って来ていないことの方が多く 持ってきたところで出かけやしないのだから撮る機会もないのだけれど、
写真を撮る目的でどこかに出かけていたのか、 出かける度に持ち歩いては撮っていたのか、 どちらにしろ、彼にとってカメラは 前の彼女との思い出の一部なんだと思う。 彼女は美大の子だったそうだ。
ふと、 彼のブログをしばらくぶりに見てみた。 別れて写真でも再開した のであればいいなと思っていたりしたのだけれど 更新は一向に止まったままでただ、 ひとつリンクが貼られていた。
行ってみたらすぐにピンときた。 これが、前の彼女だ。
私は気が強く負けず嫌いのきつい性格をしているので 何となく前の彼女もそうなのだろうと思っていて、 早稲田君がふと話してくれた彼女の話は 繁華街のど真ん中で彼の頬に張り手をくらいわせ、置いてきぼりにしたり、 突然連絡がつかなくなり、どうにかしてコンタクトがとれた 時には彼女には新しい恋人がいた というエピソードも割と自分に近い輪郭をイメージしていた
けれど、とても優しい絵を描く人で 文章にもおだやかなふわふわとした雰囲気が滲み出ていて 彼がいい子だ、と漏らしていたのは本当だと思う。 そんないい子に張り手を食らうというのは どんな気の逆撫で方をしたのだろう、 しかしその様は、彼を知っている私には想像がつく。
ただ 別れてからも私がまだ未練を残している と心のどこかで思っていたであろう彼 のベクトルが再び彼女に向いたのは、 少しぐさりときた。
私とおんなじ。
つまりはあの短い付き合いはお互いに ナカッタコト になったのだ。
気の迷いだったのか、次にまた見た時には そのリンクはもう消してあった。
私もブックマークから彼のブログを消した。
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