プープーの罠
2004年11月01日(月)

差別と現実

猪口さんはもともとは派遣社員だった。
単発派遣が主流のこの会社で
正社員登用を前提とした 派遣採用で入ったらしい。
そういう意味で
この会社で私の立場を一番解っている
のはきっと猪口さんであろう。

私も
派遣の面接で正社員
を打診され、断わりましたが
働いてみて考えたら?と派遣で採用、
更新の際に再び正社員
登用を打診され、やはり断わり
派遣契約も終了、しかしてまた
派遣として呼び戻され、今に至る。
会社は正社員雇用には実に
前向き である。

猪口さんは、1年の派遣社員を経て先日
まずは契約社員に登用したそうだ。

男女平等
とは言ってもやはり
実際はそうではない
ことはいまだに多く
私が派遣でありながらも
それなりの評価を受ける
のは、男女差別の恩恵 でもある。
"結婚するまでの腰掛け"OL
ほどあからさまでないにしても
"責任を取らない"と言い切っても
非難されたりはしないし、
そんな"無責任"発言をしていようとも
正社員に迎えてくれようとしてくれる。

一方、男性の派遣社員
というのはたとえそれが自分で選択した道
だとしても
"正社員になる能力がない"
または
"正社員として雇われない理由があるのではないか"
そんな勘ぐりを持ってして
あまりイイ目では見られないようだ。

実際のところ、
それは猪口さんが
東 京 大 学 を 出 て い る
という学歴を持ってしても
やはり拭い去れない"理由"を
勘ぐらせるだけの要素は多分にあり、
無意識か皮肉なのか、わからないけれど癪に障る言い方
「うちの大学ではそういう教え方はしてなかったですけどねぇ」
などと年上のコピーライターを咎め、
インターンでバイトをしている大学生に向かって
「電話の取り次ぎごときもできないのか」
と憎々しげに呟いたそばから自分は
鳥の唐揚げをむさぼり食べていた
そのままの手で受話器を持って
そのまま私に取り次ぐ。

猪口さんはこの会社が初めての社会進出であり、
ということははじめから派遣社員なのであり、
くわえて 新人社会人 というには決して若くはない
30代も半ば に差し掛かっている。


会社からしたら
時給制より月額契約の方が得策です。
なんてったって"いつも会社にいる"のですから。
しかし 派遣から正社員に登用する
に、あたっての会社側の"躊躇"
みたいなものが垣間見える 契約社員
というイレギュラーなステップアップ。

猪口さんの会社的メリットは今のところ
"いつも会社にいる"ということくらいだ。
そこに"意味もなく"という枕詞がつく
にしたとしても。

索引
「プープーの罠」 written by 浅田

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