プープーの罠
2004年10月08日(金)

Perfume Of Love

今月から新しい人が3名増えまして
今日は歓迎会です。
隣に座った新人さん
とはいえ前の会社で5年働いていたキャリアのある男の人、
少し動く度に控えめなオブリークの香りが
ふわり と香る。
ハニちゃんとおんなじ匂い。

少し 少し
私は席の間隔をあけていき
歓迎と社交にあふれた場から距離を置いて
静かに湯葉とアボカドのサラダをつつく。

私には関係のない世界だ。

会議で遅れて来た会社一のオトコ前が
「つめてつめて」と私を元の場所に押しやり隣に座る。
ホストのような雰囲気
ナルシストというわけではなく、
フェロモン過多と言いますか、
淡白なパーツがメリハリなく配置された"日本人"のつくり
をことごとく逸脱しているこの人は、
スーツを着るとラテン系のセクシーさ
体毛が濃くて無精髭、胸毛まで生えてるし
大ざっぱでがさつなところも"ワイルド"
なんて好意的な形容で済まされ、
ひゃっひゃと笑うところは無邪気、
本名までカタカナだし
スペインまでは届かずともメキシコ
でも充分通用しそうなくらいの丸ごと天然オトコ前だ。

「初めまして、僕プランナーです。」
「あぁ、はじめまして。デザイナーです。」

オトコ前プランナーは私を飛び越して新人さんに話しかけ、
私は背筋をのばして視線を遮らぬように気を払い、
それをテニスの審判のように
右、左、右、左、聞いている。
前やっていた仕事、得意な仕事、
できることを順に聞いている雰囲気は
まるで仕事である。

オトコ前があまりにも身を乗り出すので
私がモノを食べようとすると
オトコ前にアーンしている案配になり
ただ じっ としているしかない
のに耐えかねて
「席変わりましょうか。」
と言うと、オトコ前はひゃっひゃと笑い
「合コンじゃないんだから。」
と話を打ち切ってしまった。
結局邪魔をした。

それから二人で少し話をし、
今、私のやっている3つの仕事のうちの2つが、
彼の企画であり、接する機会は多いのですが
雑談的なことをしたことはなく
何で派遣なのか、とか
うちの会社についてどう思う?とか
これからどうするか、とかとか。
まるで仕事である。

拳を丸ごと食べそうな勢いで
つまようじを使いながらこっちをじっと見て話す。
深い二重のつり目がきつくてどぎまぎしてしまう。
それを恋愛感情と見紛う女の子もきっと多いと思う。

彼もまたワーカホリックであり
まぁそれは親しくもない相手にいきなり
プライベートをぺらぺら喋り出す
ようなデリカシーのないタイプじゃない限り
無難に仕事の話しかしないものだ
ということを差し引いても
彼は間違いなくワーカホリックであり、
意外にも同い年だったのでありました。
こういう人なら私が恋愛対象になることはないだろう
と思う反面、友人にすらなれないだろうなとも思う。

そして、私が思っていた以上に
正社員のみなさまは派遣社員を
区別している ということを感じる。

どしゃ降りに紛れて帰る。

派遣会社からメール
『派遣契約3ヶ月延長を希望されてますが、』

悩む理由もないが
もったいぶって返事をまだしていない。
そんなことくらいでしか
自分の価値を測ることができない。

索引
「プープーの罠」 written by 浅田

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