2004年09月23日(木)
それは魂のように独立した意志を持ち、ひとり歩く。
トシの会社がビジュアルプロデュース に関わっているフォーラムに 無料で招待してくれるとのことで、 それには眉も間接的に関わってるらしく 久しぶり、眉とトシと会いまして丸の内。 3人で会うのは卒業以来、初めてのことです。
私は普段接する人は大方 年上の人ばかり ですが 彼らはみな フランクに接してくれるので 年の差を感じる機会があまりない むしろ 無遠慮で失礼な私の態度にいちいちムッとしない オトナの方々なのですが、 この二人は私の数少ない同い年の友人であり 私のことを 鬼 または 悪魔 と呼び、 それから たかだか数カ月 早く生まれたことを大人ぶり、 私のことは妹のように、 そしてわがまま姫として扱ってくれます。 気の置けない友人なのであります。
プロデューサーに挨拶する眉について行き、 眉の、フォーマル までは硬くないがコギレイな服装と シックな色合いの花束を渡している ビジネス・モードを遠巻きに眺めて あら、オトナになっている、とぼんやり思う 一方、私は手ぶら・Tシャツ・ジーンズで完全な場違い、 挨拶しているところから離れて立って傍観者を気取るも プロデューサーは眉と私を交互に見て 「あら〜アナタ達キョーダイ?」 と、大きな声で問いかけてくる。
私は本当に傍観者を気取っていたそれはまるで 道端でパントマイムを眺めるかのごとく 絡まれない程度に距離を置いて腕を組み 物珍しそうに眺めていたので、今更 しゃきんと立ち直すのもおかしいかなぁと うっひゃっひゃと品のない愛想笑いをしながら とりあえずぺこりと頭を下げた。 挨拶というよりは"キョーダイ"にうなづいた ように見える案配だったかも知れないと思いながら スミマセン〜と謝りながらエビのように撤退 する眉に連れられて会場に入る。 浅田といると全部アンタペースになるから何か調子狂うわ、 スマートに花渡してキメるハズだったのに! と眉に睨み付けられる。 私達は特に似ているわけではない。
フォーラムでは講談を聞き、講演を聞き 自発的に触れることはまずないであろうカルチャーに 感嘆と睡魔が折り合いをつけて共存する時間に浸かる。
鏑は海へ入りければ、扇は空へぞあがりける
平家物語はそういえば昔暗記していた ことがあることを思い出す。
その後、仕事を切り上げたトシと合流し ご飯を食べに新宿へ移動。 中華料理を囲んで話すことは学生時代と何ら変わりなく、 ここだけ時が止まっているような感覚、 けれど確実に時は進んでいて 眉はディレクターとしてテキパキと仕切っているし トシはグラフィック界の大御所の下で いろいろな経験を積んでいる。
そうだ今度一緒に組んで仕事しようよ、 俺がグラフィックやるから浅田が映像やって 眉がプロデュースしたらいい。
二人は学生時代と変わらない目をしていて、 今だに夢に溢れている。 眉は絵を描くのをやめたけれど、 それは挫折したわけではなく 夢が より具体的に、明確になったからであり 自分で描くよりも、そのシチュエーションに最適な作風 を持った人を選び出し、自分の思い通りに描いてもらう ことによって、自分の仕事の幅とバリエーションが格段に拡がること、 また、そういったディレクションのエキスパートになりたい と彼女は気づいたのだ。 実際に現実になるのも もはや夢では ない。
一方、私はどうだ。 ただ首を横に振り、人の夢まで頭ごなしに粉砕する。
私はダメよ、もう映像やってないし、 仕事を選ばないし 飽きたらすぐ辞める ただの 派遣社員だから。
浅田は現実的すぎていけない。 腰が重すぎるのも慎重すぎるのも悪いとこだ。 それから自己評価がシビアすぎる。 下を見ればキリがなく、自己満足するのは容易いけれど 上を見たってキリはない。 十分に胸が張れるだけの実力があるんだし 並み大抵のことは何でもできるんだから。 自分で過小評価してチャンスつぶしてどうするの。 今も映像やりたいんでしょ?
それは過大評価だ。 二人が実際に目の当たりにして知っている 私の能力は学生時代だけの話だ。 私は確かに学年で首位にいたが、それは単に 授業に対して生真面目だっただけであり しかもその学生時代からどれだけの時間が過ぎているのか。
映像がやりたかった
そうだ、私は学生時代、確かにそう言っていた。 そんなことまるきり忘れていた。 やりたいことなんてもう見失っているんだもの。
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