プープーの罠
2004年07月09日(金)

静かな喧噪の中で

 今日飲みに行くんですよ
 つじさんとオオサトさんと。

と、タミオくんが言った。
珍しいオトコ3人組だねと言うと
まぁ、浅田さんは察しがつくと思いますが
彼は苦く笑顔を見せる。

タミオくんはアルバイトだ。
入りたい会社の長い長い採用試験を受けている
間の生活費稼ぎでうちの会社で働いている。
22、3なのにさくさくとプログラムが組めて、仕事が早い
だけのことはあり、試験も一次二次と進み、
一方ではそんな人材を手放したくないのが上司の立場、
つじさんとオオサトさんで説得にかかるわけだ。

ほんとだグルになってる。
つじさんは直属の上司だし
オオサトさんは総括なのでタッグを組んでもおかしくはない
のだけど、今までのうちの会社では ない ことだった。
まぁがんばって
と私は家に帰る。
その意味はなかなか複雑である。

激動の1週間
だったのに、その状況の異常さを
誰にも話さないまま1週間が終わってしまった
ことに対していささか消化不良感を抱きながらも
来週には私は契約終了の旨を社長に伝える。


1時過ぎ
ハニちゃんからメールが来て

『今 家。しそ焼酎がおいしいよ。』

ハニちゃんは焼酎が飲めない。
いつも私が飲んでいるのをちびりと味見しては
アルコールランプの味がする
と言って日本酒を飲んでいた。

それは、
来いと誘ってるのかい?

ハニちゃんは気づいているだろう
私がまだ好きなことを。
だから、私から行動する
わけにはいかない。
都合が良い存在になる
わけにはいかない。

会いたいなら、会いたい
って言えばいいのに。

『飲みすぎに気を付けて。おやすみ』と返信
少し突き放したみたいになっちゃったかしら
と思った時、電話が鳴り、
私は飛び付くように出た
けれどそれはオオサトさんからでした。

 今まで飲んでたのですけど
 終電ないし、みんな会社に戻るって言うから
 俺は帰るってみんなと別れてきたんだけど

 これから飲み行こうか。


 今からそっちの駅まで行くから。

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「プープーの罠」 written by 浅田

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