2004年06月09日(水)
ラスベガスのアスパラガス
昨日 残業していた時に 社長に飲みに誘われました が、私はもんじゃの約束があり 第一 残業中 だったので お断りしまして そしたら今日行くことになってしまいました。
かなり乗り気じゃない。 ワタクシ、会社付き合いの飲みというのは むしろ得意な方なのですが この社長と飲むのはいやだ。
残業が、あるんですけども。 と、お断りしようかと思いましたら 社長はそんなことは聞く耳なしに 「じゃ、みんな待ってるよ!」と意気揚々 会社を後にする。
そのまま残業でブッチできるかしら と淡い期待を持ったのも つかの間、 オオサトさんに「ほら行くよ。」と呼ばれる。 昨日マンツーマンで誘われたからには 私は参加がマストなのである。 つじさんは「がんばれ」と追い払うように手をふっている。 森君もさっさと帰ったし 他の誰もが行く気がない。
オオサトさんとふたり、飲み屋に向かう道 いつもより少し口調がきつい 見れば総括のカオをしていて、 かと思えば色の薄い目を細め、 この前、酔ってたわけじゃないから。
あぁ、そうですか。
合流した時にはすでに社長はデキあがっていて、
ところで浅田さん、 最近表情がやさしくなってきたねぇ、 女らしくていいねぇ、 カレシと何かイイコトあった?
社長が言うとどんな言葉でも セクハラ くさく聞こえる。 森君がこの場にいたら鼻で笑っただろう。 今だ ハニちゃんにココロふりまわされ、 "たかが恋愛"に淀んだ私を らしくない と叱咤しているのだから。
オオサトさんが割って入る。 いやいや、浅田はオンナノコですよ、 気が強いように見えるけど。 私はますます苦笑いをするしかない。
さらに遅れてつじさん登場、 来ないと言っていたのに来たので嬉しくなってしまった。 「よく来ましたね」と耳打ちすると 「オトナだからね。」とつじさんはニカリと笑い、 私が焼酎を飲むのに付き合ってくれる。
どれがいいです?この前の美味しかったですよね あーそうね、あれないの?
「この前って何? つじさんと浅田さんて付き合ってるの?」 社長はいちいちセクハラくさい。 ちょっと話すとすぐひやかす。 中学生並みだ。 すべての男性社員とそう言われた。 しかし、オオサトさんとは 言われたことがない。
オオサトさんが老けて見えるひとつとして 性的欲求 がまるで なさそう だからだ。 それは同性から見てもそう見えるのだろう。 手をつなぐ件にしても あれだけ堂々とつないでくるのに 結局"酔った浅田に絡まれた被害者" 的 解釈で収まるのである。
それから、社長お馴染コースなのでしょうか、 働く前にも連れていかれたバーで 社長はお得意の夢を語りだし、 オオサトさんは考え込むようにそれを聞いている。
社長の理想論はこうして聞くと とても夢にあふれ、素敵なものに聞こえる けれど、いざ実現に向かうと とても簡単にボロが出るハリボテのような中身のなさ、 つじさんは聞く耳ナシに寝ていて、 私はマッカランを飲みながら聞き流す。 ずっとオオサトさんと膝があたっている。
2時を回った頃、 社長は思い出したように立ち上がり 一人タクシーで帰り、 つじさんはいつも徹夜で帰れないときに泊まるホテルへ、 またオオサトさんとふたり残され、 今日の酒は飲んだ気がしない 飲みなおそうか と、通りかかった店に入る。 やはり、手をつないでいる。
表情が明るくなった って言われてたね
オオサトさんは嬉しそうに言う。 ハニちゃんとはもうどうにもならない ことを彼は知っている。
「気のせいですよ。」 「そう?」
彼は実にストレート。 「ねぇ俺と付き合って」 と言う。 はっきり言う分 こっちもはっきり言える、 まだハニちゃん以外は まったく 恋愛対象 にならないし こうしてハシゴに付き合う のもあなたが 結婚 しているからだ と。
悲しいこと言うね。 冷たいよね。 でもほんとに浅田のこと好きよ。 そういうとこホント好きだわ。
アルコールが私をクラクラさせる。
店を出る頃にはすでに日が昇っていた。 タクシーをつかまえて並んで乗り込み、 私は外を眺める。
「手をつなぐのはいいの?」
気付けばまた 手をつないでいる。 私は答えに困って手を引っ込める。 オオサトさんはまた手をつないでくる。 それがごく自然であるかのように。 何も話さないまま手だけが触れ合っている。
家に着くなり短い時間を泥のように眠り、 いつもと変わらない時間に起きて オオサトさんからモーニングコールがくる。 やわらかな空気が流れている。
表情がやさしく、ねぇ。 外れてはいない のかも知れない。
|