2004年06月27日(日) |
A bloody Fairy tale:Una storia Delicata ed insanguinata |
閉ざされた迷宮にも花咲く季節はめぐる。爵位を受け、貴族となってからの私には、御舘様より(父と呼ぶことは封じられた)貴族としての作法や教養を身につける事を要求された。剣や宮廷作法の教師があてがわれ、私のヴァンディミオン家の日々はそれら修得に費やされる様になった。ファルネーゼ様のお相手はこれまでと変わらない。時に机を並べて学ぶ時もあった。
My mother has killed me, My father is eating me, My brothers and sisters sit under the table, Picking up buey them under the cold marble stones‥
「セルピコ、その歌は何?」 語学の授業を終えた帰り、口ずさんでいた歌をファルネーゼ様に聞きとがめられた。 「‥チューダーの歌です」 「お前は教師が来る様になってから、妙な事を覚えてくる様になったわね。馬に乗りたいの。そんな歌はやめて用意をして」 「はい、ファルネーゼ様」 馬丁はいるのだが、ファルネーゼ様のお世話は私の仕事だ。仮に馬丁がいたとしても、ファルネーゼ様は私にしか用を言い付けない。
おかあさんが僕を殺した おとうさんが僕を食べた 兄弟や姉妹はテーブルの下に座って 僕の骨を拾っている みんなで僕の骨を 冷たい大理石の下に埋めるんだ…
私は母に喰われ、父にその存在を殺された。ファルネーゼ様は私の骨を拾って大理石の下へ埋めてくれるだろうか? つまらなそうに私の骨を拾い、火にくべるファルネーゼ様の姿が脳裏に浮かんだ。少なくとも灰にしてはくれるだろう。 箱庭にも薔薇や百合が咲き乱れる季節に、私はそんな事を考えていた。
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