小ネタ日記ex

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君に運命の花束を(コードギアス/ユーフェミアとスザク)(その他)。
2007年06月23日(土)

 蒼穹に響け、救いの声よ。









 その声は聞く者の耳をとろけさせ、心を癒す。
 神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミアの歌を聞いたある青年伯爵が、彼女の声をそう評したことがあった。
 けれどもユーフェミア自身はその賞賛がただの社交辞令だということを誰よりも理解していた。ソプラノの声質の悪さを嘆いたことはないが、自分はそんな女神の真似事は出来ないと。
「お人形のお姫様、だそうです」
 今は亡き異母兄クロヴィスの庭園を散策しながら、ユーフェミアはそう言って傍らの騎士に微笑みかけてみた。
 空は青く、やわらかな質感の雲がそっと流れて行く。あたたかな日差しと丈を揃えた芝の中に、濃いピンク色の菫が咲いている。小さな池と潅木がアクセントになっているこの庭園では花が絶えることはない。
 平穏を約束された皇族の庭園。ユーフェミアはこの庭が好きだった。
「自分は、そうは思いません」
 彼女の騎士である柩木スザクははっきりとそう答えた。彼の白い騎士装束が青空に映え、まぶしさを感じてユーフェミアは目を伏せる。
「なぜそう思うのですか?」
「少なくともあなたは、日本人が虐げられる事実に心を痛めて、ご自分に出来ることを模索している。何もしていないわけじゃない」
「…それでも、その成果が目に見えないのなら、それはきっと人形と同じなのでしょう」
 卑下するようにユーフェミアは言い、右手で左手を包むように握った。
「ユフィ」
 静かに、揺るがない意志を込めたスザクの声。ユーフェミアはそれが自嘲しないで欲しいと告げるスザクの思いのような気がして、顔を上げる。
 桃色の髪を揺らし、目を細めて微笑む。
「ごめんなさい。少し、気になっているだけ」
 いまさら気にすることじゃないはず。その思いを強く心に浮かべながら、ユーフェミアは微笑んでみせる。
 笑うことは得意だった。幼い頃からそう望まれていたから。やさしくわらって、ただそこにいるだけで、皆は喜んでくれた。それが変わってしまったのは、兄たちの権力闘争が激しくなってきた頃からだ。
 二十を越える現皇帝の子どもたちの中で、ユーフェミアは皇位継承権こそ高い位置にいるとはいえ、政治的な能力に欠如することは誰しもが認めるところだった。知識、決断力、体力、等あらゆる分野で彼女が他の候補者たちより秀でたところはない。
 人形の姫と呼ばれても、ユーフェミアにとっては事実だった。自分ではそのつもりはなくとも、事実には違いない。事実を突きつけられたときユーフェミアは激昂しかけたが、冷静に思い返せばあれはきっと皇族としての矜持だけで相手を無礼者だと感じただけだった。
「元気がないんですね」
 ふと、困ったように騎士が声を掛けた。
 ユーフェミアよりかろうじて年上とはいえ、まだ少年の面差しをした彼は、真っ直ぐに彼の主を見つめている。
「どうか笑って下さい、ユーフェミア様」
「…え?」
「力にはさまざまな形をしたものがあると思います。剣や銃だけではなく。それでいうなら、あなたの笑顔や笑い声は間違いなく武器です」
「そんなもの…」
 愛想は皇族の身ならば誰でも身につけていて当然だ。国民への印象を考慮し、公的な場で振舞うことは皇女としての義務だった。
 思わず首を振りかけたユーフェミアを押し止めるように、スザクが自分の右手を彼女の前にかざした。
「僕は君の笑顔と、その声に救われた」
 あの日、好きだと告げてくれた明るい声に。
「だから、君はどんなときも笑っていて欲しい」
 声質はやさしかったが、それはあまりにも一方的な意見だった。思わずユーフェミアは憤然としたものを覚え、スザクを睨み上げる。
「それはつまり、何があってもわたくしはにこにこ笑ってさえいれば良いということ?」
「え、ち、違います。そういうつもりじゃ」
「そういうつもりに聞こえたわ」
 軽く頬を膨らませたユーフェミアに、スザクが小さな声で「困ったな」と言いながら言葉通り困惑した顔をする。
「えーとあの、ユフィ、怒らないで」
「いやです、怒ります!」
 うろたえだしたスザクから、ユーフェミアはつんと顔を逸らす。ときどきスザクは言葉の過不足の幅が大きすぎる。総じてそれを天然だと呼ぶ彼の上司たちもいるが、ユーフェミアもそれは事実だと思っている。
 ふいと顔を背け、ユーフェミアが拗ねた横顔を見せると、スザクが一層うろたえる気配が伝わってくる。
「…すみません、ご不快でしたら、あやまります」
 妙にしゅんとした声に、ユーフェミアが視線を彼に向ければ、半ばうなだれたスザクの顔が目に入る。尻尾が垂れ下がった犬。そんな印象が重なり、ユーフェミアは目を瞠る。
「やだ、スザクそんなに怒ったわけじゃないの。気にしないで。ね?」
 慌ててスザクの正面に回り、ユーフェミアは思わず彼の手を握る。手袋越しに体温を感じながらスザクの顔を見上げれば、彼は「はい」と言いながらにっこりと笑った。
「気にしてません」
「…スザク、あなた私をからかったの?」
 そうに違いない。青空の下、ユーフェミアの声のトーンが少し落ちる。
「いいえ」
 しかし白い服の騎士は、そんなユーフェミアに否定しながらもにこにこと微笑むだけだ。
 その顔を見ていると、ユーフェミア自身の心にもあたたかな思いが宿る。自己犠牲を厭わない彼の厳しい顔つきは立派だと思っているが、ユーフェミアが一番好きなのは彼が幸せそうに笑った顔だ。
 どんなときも笑っていて欲しい。そしてどうか、幸せに。
 愛しき人々へのいつも願いが、スザクの面差しに重なる。
「学校にもあなたのように笑う子がいるんですよ」
「え?」
 スザクは穏やかに笑った顔のまま、話を変えた。戸惑いにユーフェミアが小首をかしげると、彼は笑顔のまま続ける。
「友達と仲が良い女の子なんですけど、屈託がないっていうのかな、周囲の声よりも自分の直感を大事にする子なんです。転校してから、僕にはじめて話しかけてくれた女の子です。あなたのように」
「わたくし?」
「はい」
 学校での出来事を思い出したのか、スザクの声音が一層やさしさを帯びる。
 スザクが学校でどのように過ごしているのかユーフェミアは詳しく知らないが、あの小さな社会組織で異分子は目立つ。自分自身の短い学生経験からユーフェミアはそれを痛いほど知っていた。
 だから、彼が学校に馴染んでいる話を聞くと、よかったと素直に思う。友達や仲間。幸せを感じることが出来る世界をもっと広げていって欲しい。
 たとえそこに、皇女の存在は不釣合いであったとしても。
「自分だけでなく、コーネリア殿下や他にも色んな人たちがあなたが笑った顔を好いていらっしゃいます。だから、あなたの笑顔は自分が守ります」
 繰り返される誓い。ユーフェミアはその真摯な思いに向かってそっと笑う。嬉しさが半分あり、残りの半分はもう少し自分を顧みて欲しい気持ちだった。
「…ありがとう、スザク」
 抱きしめたくなる。ユーフェミアは不意にそう思った。
 守られるのなら逆なのかもしれない。けれどユーフェミアもスザクを守りたかった。このひとを守って、誘って、安寧が約束された地へ共に並んで立ちたい。
 人形にはならない。皇女としてそう誓う。
 このまま人形に甘んじていたら、名を失った兄皇子に対して申し訳が立たない。あの人はもう一人の『妹』と自分の誇りを懸けて、暗闇の道を選んだ。
「じゃあ、ずっとわたくしを見ていてくださいね、スザク」
 背筋を伸ばしたユーフェミアは、スザクの向こうの青空を見やる。蒼天の色は母国のそれより幾分薄い色だ。この空のどこかに、ルルーシュもいる。
 あの人も救ってみせる。スザクと同じように。
 二度ときょうだい殺しの汚名を着させたりはしない。
 権力も富もいらない。ただ、皆が幸せになってくれさえすれば。
 その思いは、幻想だとルルーシュなら笑うだろうか。スザクなら賛成してくれるだろうか。
 桃色の髪を風に撫でさせながら、騎士を従えた姫はただ思案に耽った。









**********************
 コードギアス23話前後に途中まで書いたものの、「何のひねりもねぇ!」とセルフ没にしたものです。
 ネタがなかったので、引っ張り出して手を加えてみたものの、案の定ただのぐだぐだネタ。ごめんユーフェミア。彼女は「ユフィ」と表記するよりも「ユーフェミア」のほうがお姫様っぽくて好きです(ユフィというとFFの忍者娘のほうが先行イメージとしてあるせいでしょうか)。

 そういえば、猫騒動のときに周辺はまだ犯罪者扱いされた日本人のスザクを遠巻きに見ているのに、シャーリーが「ありがとう、スザクくん!」(ちょっと違うかも)とためらいなく駆け寄っていくシーンがすごく好きです。
 世界の危機より自分の恋が大事、と言い切る彼女ですが、だからこそ色々なものに色眼鏡をかけず、穿った視線を向けずに生きているのだなぁ、と。
 ルルにとってはまさに平穏な学園生活の象徴だったのだろうと。『たぶん好きだった人』。
 そんな『今好きで、今好きになってくれた人』から自分に関わる記憶一切を消し、『かつて好きで、今自分と手を取り合って生きていこうとしてくれた人』を殺したルルーシュの運命にさめざめと泣けます。

 延々ギアスネタで知らない方には申し訳ないのですが。
 ルルーシュのキャラソング『Never End』。
 酒井ミキオってさぁ、タッキー&翼の仮面の曲作った人なんだよね。
 ということを思い出しながら、思いっきり笑いながら聴きました。ふくやまじゅんはがんばったとおもう。
 ルルが「なつのひーのー はーなになりましょう〜♪」とか歌っていると思えば、次からタキ翼の「仮面」を聴くのが一層楽しくなると思います(ギアスとジャニッ子の趣味が重なる率がどのくらいかは知りません)。
 Never Endと仮面は、曲イメージ自体はそう変わらないと思うので。まあ、次から『仮面』はルルーシュが歌っている(繰り返し)と思えば一層楽しく。タイトルもルルっぽいし(マスカレードと一部被ります)。
 最終的には、ルルーシュが歌って踊ってる、と思えるようになった人が勝者。

 そういえば、歌といえはここんとこカラオケでプライベート・会社問わず3連続で、
「声かわいいねー声優みたい」「新人声優みたいな声だね!」など
 を、言われるのですが、ショックなのは本人だけなのでしょうか…。そりゃ声は高い部類に入るとは思いますが。
 いやショックじゃないですか? 私の声そんなにアニメ声!? って思うのは(本職の声優さんの声がキライというわけではない)
 っていうか私はそもそも自分の声が嫌いで、仕事で自分の電話音声録音とか録画をチェックするたびに「この女の声ウザい」と本気で思う。自分の声だからこそ余計に。こんなウザい声で応対してしまいお客様ほんとすみません。




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