小ネタ日記ex

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再録:もしも君が4(笛/三上亮)(人魚姫パラレル)。
2007年06月14日(木)

 もしも君が人魚姫だったら。






※前回まではこちら参照で。

 王子の見合い話は、あっという間にまとまりました。
 元々王子の周囲と先方は乗り気だったのです。王子本人の意思さえ決まってしまえばすぐに顔合わせが済み、双方に異論なければ婚約祝いのお披露目パーティーに突入です。

「意外だったな」

 友人の祝いにわざわざ来てくれた、お隣りの国の王様は会場の端で王子にそう言いました。

「何がだよ、渋沢」
「お前があのタイプを選んだことが、だ」

 王子の友人の視線が、ちらりと離れたところにいる王子の婚約者となった人に移りました。

「苦手だろう? ああいうおっとりした子は」
「公爵家の三女だとよ。大臣どものオススメトップ」

 やる気なさげな王子は、まるで自分には関係ないとても言いたげです。
 十五の歳にはもう陛下と呼ばれるようになった青年が、不思議そうに首を傾げました。

「何だ、乗り気じゃないのか?」
「…誰でもいいから形だけでもしとけって回りがうっせーからな」

 そこそこ危険な会話でしたが、音楽と談笑に満ちた大広間でしたので二人の声はうまくかき消されてくれました。

「その様子じゃ、本命には振られたのか」

 突然見抜かれ、王子はポーカーフェイスを装う暇もありませんでした。
 王子が返答に窮していると、友人がまじまじと見てくる視線を感じました。

「…本当にいたのか、本命」
「…………」
「どうしてダメだったんだ?」
「…見合いするつったら、うまくいくといいわねって言われた」
「それで自棄になって見合いしたあとそのまま婚約したのか」

 見透かしたような呆れた声で言われ、王子は再度返答に困りました。その通りです。

「お前の悪い癖だな。否定されるとすぐ自棄になる」
「…うるせえ」
「どんな相手だ?」
「かわいくねーヤツ。ああ言えばこう言うし、何してやっても王子だったら軽々しくどうとかって説教してくるし」
「でも、お前は本気だったわけか」

 笑いながら言ってくる友人の渋沢氏でしたが、実際婚約者がいる相手との会話としてはどうなのでしょう。
 王子は先日の人魚姫の落ち着いた横顔を思い出します。
 そして幾度も向けられたやさしい笑顔と、凛とした瞳が胸に痛みを感じさせました。

「…向こうにその気はなかったんだろ。俺ばっか空振りで、…みっともね」

 王子が見合いをすると言ったのは、彼女の気持ちを知りたかったからです。
 彼女が少しでも悲しそうな顔をしてくれたら、周囲の意見など強固に突っ撥ねる覚悟を決めていたのです。ところが、人魚姫は王子の願い通りにはなりませんでした。
 勝手だと王子はわかっていました。
 それでも、王子は彼女の確かな気持ちが欲しかったのです。







 夜半、人魚姫はひとり城の近くの海辺で行きました。地上へ来てはじめて王子と会った場所です。
 いまごろ城では王子の婚約祝いのパーティーが繰り広げられていることでしょう。
 人魚姫があの黒髪の王子と初めて会ったのは、もっと前のことでした。
 嵐の晩、溺れ死にしそうになった王子を人魚姫が助けたのです。王子はそのことをあまり覚えていないようですが、人魚姫は覚えています。それこそが人魚姫が人間になる理由でした。
 あのとき、王子と出会わなければ人魚姫は今も海の国で暮らしていたはずです。
 声を失わず、切ない想いもせず、穏やかに生きていたことでしょう。そして同じだけ、風の匂いや木漏れ日の優しさ、誰かのぬくもりも知らなかったはずです。
 岩場の端に腰掛け、人魚姫は満天の星空を見上げました。
 銀色の星を見ていると、不思議と心が落ち着きます。海で生きていた頃はこうして星を見ることなどまったくありませんでした。


「…そうしてると、まるで本当の人間みたいね」


 澄んだ声が波音よりはっきりと人魚姫の耳に届きました。
 すぐそばの海面に、肩までを波の上にさらし微笑んでいる懐かしい顔がありました。
 耳元にある透明な水色のヒレが、人魚姫の同族であることを証明しています。
 お姉ちゃん、と人魚姫の唇だけが動きました。その唇の動きを読み、人魚姫の一番上の姉は労りが込められたまなざしを向けました。

「どう? そっちの世界は楽しかった?」

 過去形で言われたことに人魚姫は気付きました。

「でも、もういいでしょう? 元からあなたは地上に生きる者じゃないの。これ以上そちらにいても辛いだけよ。帰ってらっしゃい」

 大好きな姉の言葉でしたが、人魚姫は黙って首を横に振りました。
 帰るためには元の人魚の姿に戻らなくてはなりません。その方法を人魚姫は知っていました。そしてそれは、人魚姫にとって耐えられないものでした。

「王子はあなたを裏切ったのよ」

 違います。
 人魚姫は出せない声で、強く否定しました。
 王子の気持ちを裏切ったのは人魚姫のほうでした。彼の心をわかっていたのに、人魚姫のほうが先にそれを封じたのです。それが王子のためだと言い訳して。

「違わないわ。勝手に大事にして、期待させるだけさせておいて、結局は他の人を選んだの。曖昧で半端だわ。それならいっそ、あなたを城になど留め置かないでおくべきだったのよ」

 辛辣に言い放つと、人魚姫の姉姫は鞘に収まった短剣を差し出しました。

「これで王子の心臓を刺して、その血を脚に塗ればあなたは元の姿に戻れる。魔女の秘薬は目的を消失したときにその効力を失う。知っているでしょう?」

 出来ません。
 姉姫の強い意志に抗うため、人魚姫は必死で首を振りました。

「やらなければあなたが不幸になるだけなの。お願い、受け取って。あの男さえいなければよかったの」

 人魚姫はそれでも短剣を受け取ろうとはしませんでした。
 とうとう姉姫のほうが覚悟を決めました。

「…あなたがやらないなら、私がやります」
「………ッ」
「ここまで王子を連れてきて」

 人魚姫はおののきました。姉姫は海から出られません。ですから人魚姫が今ここを去ってしまえばいいのですが、ここまで自分を思ってくれる姉に背を向けることなど出来ません。
 かといって、言われるまま王子を連れて来ることも出来ません。
 仕方なく、人魚姫は震える手で短剣を受け取りました。

「忘れないで。私にはあの男の生よりも、あなたの未来のほうが大切なの」

 そう言い残して、姉姫は海中に消えました。
 人魚姫の手元には短剣だけが残りました。






 ここで問題です。
 普通、人間は心臓を刺されたらまず死にます。そして王子は普通の人間でした。
 城中が寝静まった真夜中、人魚姫は姉姫から渡された短剣を持って王子の寝所へと続く回廊にたたずんでいました。
 鞘を抜いた銀色の刃に、淡い月の光がさえざえと映っています。
 人魚姫が元のすがたに戻るのに、王子を殺すというのはある意味シンプルな条件でした。王子に会うために人間になったのです。王子さえいなければ、人間でいる意味はなくなります。
 いつでも戻っておいで、と人魚姫の父王が言ったのは、このことでした。
 目的を達成、あるいは消失したときこそ、人魚姫がヒロインでいる義務がなくなるからです。話の都合上そういうことにしておいて下さい。

(あの人さえいなければ、私は―――)

 抜き身の短剣を右手に、人魚姫は目を伏せました。
 足が動きません。痛みのせいではなく、精神の深い部分が王子を害そうとする意思を拒みます。
 人魚姫は、王子が幸せであればそれでよかったのです。
 包んでくれた手のひらの温度。頬に触れた指先。黒い瞳の奥の誇りと優しさ。少しの間でも独占出来た思い出だけでもう充分でした。
 立ち尽くしたままだった人魚姫の頬に、透明な涙がすべり落ちました。








 続く。





***********************
 間が開いてすみませんの人魚姫パラレル。
 一応これまでの回はこちら
 例によって読み返しと修正作業は放棄しました。正直正視しづらいという本音が。

 もう一週分気になってしょうがないんだからしょうがないじゃん! を合言葉に、とうとう最近はロミジュリを某笑顔動画サイトで見るようになりました…(でもちゃんと正規放送分は録画しています)(DVDセット予約している意味は?)。
 笑顔コメントの「海馬瀬人を見習え」というところに大爆笑したロミオ・カンドーレ・モンタギューの坊ちゃんは、体術だけなら社長やアスランと変わらないと思うんだ!
 この間のアスラン顔負けジャンプには仰天した。あ、ジュリエットも同じか。

 しかし社会的に苦労しているのはジュリエットだけど、心を許せる存在がペン(とシエロとお母様)しかいない坊ちゃんもかわいそうだなぁ、という感じです。
 学校制度とかなさげなネオヴェローナですが、仮に貴族学校とかあってもあの家じゃきっと家庭教師なんだろうな。
 坊ちゃんはアクの強いおとーさんに押されてヘタレ気味ですが、やるときゃやろうとする子なのでしょう。やろうとするけど達成できないだけでさ!(結果はヘタレ)
 坊ちゃん10話で見直した。今までヘタレヘタレと鼻で笑っててすまなかった。
 ただ正論を通すためには稀に謀略も必要だってことを次からは考えようね坊ちゃん!

 そんなロミジュリと音楽性が似通っているFFT。相変わらず毎日ちまちまやってます。
 …やっぱりシドルファスさんはゲームバランス粉砕キャラです。ひとりで前線をどっかんどっかんと切り開いて下さいます。FF史上最強シドはやっぱりこの人。




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