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墓参の日(デス種/カガリ)(拍手から再録)。
2007年05月04日(金)
いつから、彼を『嫌い』になっていたのだろう。
短い芝を渡る風は、いつもそのときの天候を反映する。
自然は何より世界に忠実だと、カガリは金の髪を揺らしながら空を仰いだ。人気のない墓地は、晴天の日ですらほのかに寒い。
躊躇いなく、歩を進める。決して狭くない墓地だったが、かの人が葬られている場所はすでに聞いていた。
そこは、生前の彼を思い起こすことが出来ない墓石があった。小さく、簡素で、うっすらと土埃がついている白い墓石。
カガリはその前で脚を止め、膝を折らずにただ見下ろした。
「…遅くなってすまなかったな、ユウナ」
せめてもの弔意は、黒の長衣だった。その裾を自然の風になびかせながら、カガリは気づけば微笑みかけていた。もう二度と会えない、かつての婚約者へ向かって。
そして、携えてきた花を捧げる。そこで初めて膝を屈み、墓石と視線を合わせる。
「…殴ったことは、私は謝らないからな」
最後の彼との場面。まさか、二度と会えなくなるとは思っていなかった。思えばそういう別れはこれまで幾度もあったのに、あのときは他のことでカガリは精一杯だった。
ユウナ・ロマ・セイロン。
刻まれたその名。彼の生家の墓地には入れず、カガリも知らぬ間にこの場所に葬られた彼。残ったセイランの一族の者が、国家元首の夫にまでなるはずだった彼とその父の受け入れを拒んだ結果だ。
不思議だと、カガリはぼんやりと墓石を見つめながら思う。
自分の恋を棄てることになったのも、この国を追い詰めたのも、彼の愚かさとそれに抗えなかった自分のせいだと思っていた。自己の責任をかみ締めつつも、身勝手に彼がいなければと思った事実を否定出来ない。
そんな相手がもういない事実が、不思議だった。
「せめて、私が看取ってやるべきだったんだろうな」
本土戦の最中に移送される半ばで、事故のような死に方をしたと聞かされた。それでも身体は存在し、いずこかの医療施設まで搬送されていた事実までをカガリは突き止めていた。
感情論では抗ったとはいえ、一度は夫にしようと決めた男だ。死に行くその手を握ることぐらい、せめて。
そう思い、知らず墓石の埃を指で払っていたカガリは、苦笑する。せめて、何だというのだろう。結局自分たちの心は最後まで重ならなかった。だというのに、死に際だけ交錯したところで滑稽なだけだ。
ひやりと冷たい白い石。指先で幾度も撫ぜる。生きているときに優しくしてやれなかった負い目を隠すように。
死ぬぐらいなら、もう二度と会えないぐらいなら、もう少し彼を理解する努力をすればよかった。後に彼の死を聞いたときの絶望を思い出し、カガリは息を吐く。
大嫌いだった。
触れられる都度感じた嫌悪。
言葉に触れるごとに苛立った。
…そういう風になったのは、いつからだった?
強く風が吹き、金糸が乱れる。それでもカガリは白い石の前から動かなかった。
『ユウナ!』
小さい頃、大きな声で彼をそう呼んだ自分をカガリはよく覚えている。まだ、好き嫌いの分別さえつかなかった頃。彼がまだ年若い少年だった頃。
カガリ、と笑ってくれたラベンダー色の髪の少年。
いつから、彼は自分を権力の道具として見るようになった?
いつから、自分は彼を好きじゃないと言い放つようになった?
「…ユウナ」
目を細める、鼻の頭に小さく痛みが走った。
ぼやけた視界の中に、彼の他意のない笑顔が映る。
ああそうだ、あんな風に、純粋な好意で笑いかけてくれた日もあったのに。どうして、いつから、忘れてしまうようになったのだろう。
愛してはいなかった。恋もしていなかった。
それでも、自分たちが寄り添って幸せになる可能性は、決してゼロではなかった。しかしその可能性も、今はもう無い。
有事でさえなければ、オーブの首長家の当主同士として、オーブという国の繁栄を望む者同士として、協力し合えたのではないか。今もそう思ってやまない。
「ユウナ」
ごめん、と搾り出すような声になった。たまらず芝の上に膝を突いた。
墓石に縋って泣いて、頭を垂れて謝りたかった。
何が悪いのかもわからない。彼の所業は許せないことも多い。それでも、一度は未来を誓おうとした彼を、不幸のまま逝かせてしまった。
同じものを目指していた。祖国を守る。その大義は変わらず、互いにオーブを愛していた。選んだ道は違えど、望む未来は同じのはずだった。
恋を同じくすることは出来なくても、夢は同じまま、共に生きたかった。
「ユウナ」
答える声は無い。
守れなかった命が、ここにある。
「…それが、あの人の?」
唐突に声が響き、カガリは涙を拭うのも忘れて振り返る。
いつの間に来たのか、風に栗色の髪を揺らす双子の片割れが立っていた。
「キラ…」
「アスランがいない隙に出かけたって聞いたから」
勘が働いたかな。
淡く微笑んだキラが、カガリに倣って隣に膝を突く。短く黙祷し、隣のカガリの顔を見る。
「この人のこと好きだったかどうか、そういえば僕知らないんだけど」
妹の結婚相手なのに。
不謹慎に笑うキラに、カガリは眉をひそめる。そんな『妹』の様子を無視して、キラは決定的な言葉を言う。
「…この人のこと、どう思っていたの」
ざあ、と大きな風が吹いた。キラの髪とカガリの髪、全く似ていない髪が一緒に乱れる。キラはカガリのほうを見ていなかった。簡素な墓石に刻まれた墓碑銘をじっと見つめている。
その横顔を見ているうちに、カガリの胸に悔しさがこみ上げた。唇を噛み、知らず視線がきつくなる
好きではなかった。愛した人でもなかった。
アスランとは全く違う人だった。
それでも。
「死んで欲しいと思ったことはなかった」
互いの気持ちを理解さえ出来れば、仲間として同じ道を歩めたかもしれなかった人。
死は彼の時間を永久にあの時間にとどまらせ、カガリだけを未来へ押し出す。いまのユウナへの思いは半ば感傷だとわかっていながら、カガリはそれでも彼の生存を今でも願う。もう誰かが死ぬ事実を見たくなかった。
キラは短く、「そう」と言っただけだった。
ゆっくりとキラの腕が伸び、隣のカガリの頭に触れる。カガリの頭を、彼は後ろから撫でる。
言葉はなかった。髪ごしに、キラの手のぬくもりがカガリに伝わってくる。それは慰めであり、癒しであり、謝罪でもあったのかもしれない。彼の死と不遇に、キラも少なからず関わっている。
それ以上墓碑を見つめていられず、カガリは膝の上に額を押し付けた。
嗚咽と風の音を聞きながら、キラはずっと隣にいた。
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故人を偲ぶネタが続いていますがデス種小ネタ。
以前拍手御礼で使っていたものをちょっと修正してリサイクル。
…それにしたって、お礼で出す話じゃないよね、と思います。すみません。
相変わらずPSPをいじってます。
洗濯機回してる横でぷちぷちやってます。いやあエプロンのポケットにちょうど入るんですよ!
音楽流しながら料理とかもしてしまいます。キャベツ刻みながらPSPでタキ翼とか聴いてしまいます。うふふふふ(本当に欲しかったということをご理解いただければ幸いです)。
ちょうど今日、従兄の結婚式の写真がCD-Rになってやってきたので、データをPSPに入れてスライドショーで家中で見てます。パソコンは置いてある場所まで行かなければなりませんが、PSPなら居間で皆で見られます。
でもインターネットはやってません。有線じゃなくて、ワイヤレスのプロバイダ契約が必要になるので、やってません。せいぜい携帯のネット機能で十分。
よく知らないんですが、DSのネットワーク機能も無線なのでしょうか。DSにケーブルのジャックはなかった気がする…。
いやしかし、世の中は進化しますね。
灰色で厚さ3センチぐらいはあった気がする初代ゲームボーイとか懐かしいです。PSにLRボタンがついたときも「何じゃこりゃあ」と感じたものですが。
そのPSP、使うための難点は転送処理の遅さです。
拡張子変換込みで30分番組を転送するのに何分かかるんだ…! という感じで、時間がかかるのです。…これはむしろ私のPC端末の環境のせいかしら。
あと、各データ読み込みの際に拡張子はもちろんフォルダ名も必ず固定にすることで、正常にデータが読み込まれるようなのですが、そのフォルダの階層をどこまでいじっていいのかがいまいちわからない。
それから、ときどきフリーズするのはなんでかしら☆
フリーズなんかしたことない、というのが兄と妹の言なのですが、私の本体が悪いのか私の取り扱いが悪いのか。
加えて拡張子さえあれば、読み込みファイルは2バイト文字使っても大丈夫なのかしら☆
…制限事項をもうちょっとわかりやすく取説に記載してくれないものだろうか。
悲しいのはマルチタスクではないところなのですが(携帯ゲーム機にそこまで求めないほうがいい)調べたところ、ネットワーク機能の設定さえすればライブテレビ画像なども見られるようになるので、まあ! と心ときめきます。
…とはいえやはりIT端末の互換のためにファイル形式が深く関わるので、元々基本端末が同じくソニー製のVAIOだからこそ手軽に他機能を使えるのかなぁ、という感じもします。
そもそもVAIOですら、動画機能には特定のアプリを使って拡張子変換が必要になるわけで(それに時間がかかる)。
っていうか別に音楽動画ネットテレビなんてそんな機能そこらへんの携帯電話端末で存在してない? という突っ込みはノーセンキューです。
まあ私がPSPを買った目的は、FFTです。ファイナルファンタジータクティクスが移植版で出るからです。
目的と方法を取り違えてはいけません。
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