小ネタ日記ex

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冬の庭(Fate/セイバーとアーチャー)(その他)。
2006年08月21日(月)

 どの時代にいても、一度はこういう時間があった気がする。









 乾いた冬の空の色は、いつの世も素っ気無い。
 日当たりの良い縁側で冬枯れの庭園を眺めながら、青いリボンを結んだ少女はそう思った。目の前に広がるのは、武家屋敷そのものの日本庭園。彼女の手には陶器の湯のみがあり、ほのかな湯気を漂わせている。
 そして少女の隣には、赤い騎士と揶揄される青年がどっしりと腰を下ろしている。短く立った、銀にも近い白髪。浅黒い肌とその髪の対比は、青年の精悍な横顔の印象をさらに強めていた。
 青年の手にも、彼女のものと同じ湯のみがある。ただし、彼はほとんと口をつけていない。片手に持つその湯のみは、彼の大きな手のひらにただ包まれているだけだ。
 人間ではないふたりは、互いに沈黙を守っていた。
 彼も彼女同様に、主人である魔術師を持つサーヴァントだ。一般に魔術師に召喚され使役される使い魔というよりも、さらに格上の英霊と呼ばれる魔術のしろもの。
 板の間である縁側で、少女は正座を崩さずにじっと薄茶に枯れた芝の風景を眺めていた。
 彼もまた、同様に目前の風景をただ眺めている。
 不思議な光景だった。彼らの主たる魔術師たちが、さる目的のために協力関係にあるとはいえ、自分たちが呼び出された理由を考えれば二人がこうして穏やかに茶を飲む姿など有り得ない。
 おかしな有様だと、少女はふうと息を吐く。その吐息をきっかけに、赤い服の青年がすぐ真横の彼女のほうを見た。

「どうした」
「どうしたではありません。アーチャー、あなたはいつまでここにいるつもりですか。凛のそばを離れていていいのですか」

 何せ、自分たちがここにいる理由である目的を考えれば、マスターのそばを離れるなど彼女にとってみればあってはならないことだ。
 彼女が自分のマスターたる少年のそばを離れているのは、現代社会に生きるマスターのそばに生身の自分がいては迷惑になるからだ。しかしアーチャーと呼ばれる彼は違う。一級の魔術師をマスターに持つ彼は、マスターからの魔力を存分に供給されているため、他の人間たちには見えぬよう姿を消してマスターに付き従うことも可能だ。
 可能であるくせに、なぜむざむざマスターのそばを離れているのかが、彼女には不思議でならない。

「凛なら学校だ」
「それはわかっています。シロウもそうですから」
「ついて来るなと言われたからそうした。有り難いことに、こちらのマスターは己ひとりで敵の初撃ぐらいは何とか出来るのでな」

 呼ばれたら行く。それで間に合う。その自信をちらつかせる青年に、少女はぐっと臍をかむ。暗黙的に彼女のマスターの未熟さを侮辱されたも同然だ。

「それが、ここに来る理由にはなりません」
「男の行動を逐一咎めるな。剣士としては一人前以上だが、女としてはまだまだだな」
「アーチャー!」

 十代半ばの外見をした青いリボンの少女は、金の髪を揺らして怒りを露にした。マスターともども蔑まれるなど、彼女の誇りが許さない。
 凛とした緑の双眸に強い感情をたぎらせた少女に、青年は大して気にした様子もなく嘆息する。

「全く、その程度で声を荒げるな。みっともない」
――――!」

 この男は、ひとを怒らせるのに長けている。
 なぜ彼を縁側に座らせ、茶まで供しているのか。少し前の自分の行動を少女は心から悔いた。

「怒ったか」

 けれど、ぽつりと赤い青年が呟いた一言が彼女の波立った感情を静めた。彼の呟きには、揶揄する響きが感じ取れなかった。

「いいえ」

 即答し、ふいと顔を背けると、青年が苦笑する気配がした。

「女であるよりも、剣士として騎士として今も生きるわけか」
「何を言う。この身は主の剣となり盾となることを誓ったのだ。剣と盾に性別など不要だろう。守るべきものを守り、倒すべきものを倒す。むしろ女の意識など邪魔だ」
「呆れるほど潔いが、あのマスターはそれを良しとしていないのだろう?」
「…シロウは甘いからだ。そこが美徳なのだろうが、些か…」

 言いかけ、この世界でセイバーと呼ばれる少女ははたと気づく。この相手に自分たちの弱点ともなる得る情報を喋るわけにはいかない。
 ちらりと、気まずくなりながら少女が隣を見たが、青年は彼女の話をあまり有益なものとは思っていないような顔つきだった。

「苦労が多いな、セイバー。まあ、あのマスターに召喚されてしまったこと自体が不運か」
「それは違う。確かにシロウには、通常のマスターとは思えぬことが多いが、私は彼がマスターでよかったと思っている」
「………………」

 きっぱりと告げたセイバーの真摯なまなざしを受け止めたアーチャーは、数秒の間黙ってそれを見つめ、ややあって嘆息するように言う。

「…君がそう言うのなら」
「は?」
「いや、何でもない」

 もう随分冷めた湯のみの茶を、アーチャーは驚くほど品の良い手つきで飲む。背筋を伸ばし、口の中で茶の味を堪能するように喉に流し込む。
 それを見ながら、セイバーも自分の湯のみから茶を飲む。
 こうしていると、本当に不思議なほど穏やかな時間だった。アーチャーの様子からは殺気も敵意も感じられない。ただふらりと茶を飲みに来たと説明されれば、信じてしまいそうなほど穏やかだった。
 また唐突なタイミングで、アーチャーが口を開いた。

「その服はどうした」
「え?」
「武装のときの色と似ているが、君の時代のものではないだろう」
「これは凛が貸してくれたものです。シロウと一緒に出かけるときなど、この時代に合ったものがないと不便だということで…」

 一点の曇りもない白いブラウス。彼女本来の服の色とよく似たロイヤルブルーのスカートと、胸元を飾る青いリボン。敵になる身とはいえ、アーチャーのマスターは聡明で気が利く良い人物だ。
 話しながら、セイバーはふとアーチャーのほうを見て首をかしげる。さらりと金の髪と、結んだ青いリボンが揺れた。

「シロウのようなことを訊くのですね、貴方は」
「…あんな未熟なマスターと一緒にするな」
「シロウと同じことを訊く、という意味です。貴方とシロウを一緒にする気など毛頭ありません」
「それは有り難い」

 皮肉げに笑うアーチャーに、セイバーは思わず眉間に力を入れた。ふてくされた顔などしたくはないが、本当にこの男の言うことやることは面白くない感情を刺激してくる。
 ただ憮然としたセイバーに、アーチャーはまた笑ったようだった。

「なじんでいるか?」
「…マスターの周囲の人間と諍いをするようでは、困るのはシロウだ。まあ、そうでなくとも凛も含めて、シロウの周囲の人たちは皆親切にしてくれている」
「そうか」
「……………」

 全く、困るのはむしろアーチャーのほうだ。
 セイバーは軽く唇を噛む。
 彼を敵として見るべきか、同じサーヴァントとして友好的な態度を見せるべきか思い悩むセイバーを無視して、彼のほうは悠然とした横顔で庭を眺めている。こちらは、口調をどう定めればいいのかわからず、あやふやな言葉遣いになっているというのに。
 相手の意図がわからないというのは不安であると同時に、セイバーに緊張を齎してくる。穏やかな気持ちにはなれるものの、どうしても左肩のほうに力が入ったままだ。
 これがまだ戦闘状態であるのなら、すべきことが決まっている分だけ楽だ。戦いを挑まれたのなら、受けて立つ覚悟は遥か昔から確立している。
 また長い沈黙が続いた。
 退屈さこそ覚えなかったが、手持ち無沙汰なことは確かで、セイバーは軽く顎を上げて空を仰ぐ。薄い水色に、霞のような淡い雲が流れている。しずかで冷たい、冬の空だ。
 人の声はせず、鳥や虫の音も無い。セイバーが生身で体感してきた冬は厳しさそのもので、この街の冬とは比べようがない。それでも、冬の静けさはどの場所でも変わらない。
 穏やかな陽光を顔に受けているうちに、ふとセイバーはまどろむように瞳を閉じていた。

「…さて、そろそろ行くとしよう」

 縁側の板の間に湯飲みを置く音で、セイバーは目を開けた。そして胸中で己を叱咤する。同類の存在がいる真横でまどろむなど、あってはならないことだった。
 立ち上がったアーチャーは、じっと見上げてくる金の髪の少女に向かって、かすかに笑った。

「ではまたな」

 また来るという意味だろうか。そしてそれはどういう意味で?
 疑問と不信に思わず眉根を寄せてしまった少女に、長身の青年は不愉快な顔はしなかった。得意の皮肉げな笑みも見せず、凪いだ穏やかさで告げる。

「ご馳走さま、セイバー」

 やわらかに印象を変える、彼の瞳。その優しげな色にセイバーがきょとんとした瞬間、彼は立ち消えるように去った。
 後に残るのは、残り香のようなささやかな風。やがてそれも少女の前を通り過ぎていく。
 わけがわからない。あの行動も、あの笑みも、あの瞳の色も。
 やさしくされる謂れなど、ないはずなのに。
 狐につままれたような面持ちでセイバーは息を吐く。アーチャーは自分の知らない何かを知っているのかもしれないという予感がしたが、それが何であるのかがまた不思議だ。
 ただ、目を閉じていたあの時間。彼が自分を傷つけないだろうという、直感じみたものがあった。見守られるような、包まれるような光を浴びて、緊張がほどけた。

「…全く、意味がわからない」

 マスターが帰って来る前に、湯飲みは洗っておこう。
 呟き、彼が置き去りにした陶器に手を伸ばすセイバーの髪が光を感じて一層強くきらめく。
 冬の太陽は翳ることなく、清廉な少女だけを包んでいた。









***********************
 一体これは何ルートの何日目のいつなのさ、という突っ込みを無視して、Fate/stay night、セイバーとアーチャー。

 いつもなら、ゲームは完全クリアしてからでないと二次には手を出さないと決めているのですが、すっかり凛ルートが終わったらFateはもう終わったような気分です。
 はい、セイバールートと凛ルートはクリアしました。
 桜編はもう…いいか(わかってる、あれまで終わらないと伏線が全部消えないってことは)。

 ちなみに私は、自分がやる随分前から、友人神咲さんからあらすじやらネタバレを随分聞いていたので、ぶっちゃけもう知ってるストーリーを追いかけるだけに近いのですね。
 …英霊の正体をほぼ全員知ってる状態でゲーム開始しました。このだるさ、本当につらい。わかってるわかってるよアンタの正体はさアーチャー! …みたいな気持ちで、士郎ちゃんの葛藤を読む私のほうが葛藤じゃー(こらえ性がない)。

 そんなわけで、おそらく最初で最後になるんじゃないかな、と思いつつも、神咲さんから先日さらっと「セイバーとアーチャーがいいなぁ! アーチャーがセイバー大好きっぷりを見せる感じで」とか言われたリクエスト小ネタ。
 …彼女のリクエストを叶えるのは、実に数年振りだと思われます。
 剣と弓。カップリングではなく、うーっすらとセイバーを思っているアーチャーの図は、私的に大変好みでした。
 ゲーム本編しか資料がないので、色々うそくさいのは勘弁して下さい(ぺこり)。

 Fate本体を下さった、小姐さんには期待に副えなくて申し訳ないが初Fateは弓凛じゃなかったよごめん(私信)。

 さて、夏休みも終わって、Fateもひと段落したわけですが。
 甲子園も終わりましたねー。
 横浜負けたあたりでもうほんっとどうでもよかったのですが、どうも今年は名勝負が多かったとか何とか?
 でもこれで勝った子も負けた子もお疲れ様。甲子園行かれなかった子もお疲れ様。応援の父兄の方、先生方、地域の方、応援する卒業生のOBOGの方も、もお疲れ様でした。

 しかし、決勝が再試合っていうのもすごいなー、と思っていましたが、決勝戦の結果が出た頃とほぼ時を同じくして、わたくしの職場ではこっちの結果のほうが大人気でした。

 企業サイトの情報発信力結果

 うーん、そうそうたるメンバー…とはいえ、どうしても飲食系とかが強いのは致し方ないかな、とは思います。
 業界認知度よりも、一般CMとか、生活に根ざした製品のほうがどうしても印象は強いと思われる。私もナレッジマネンジメントを完全分析できるほど知識がないのであまりあれこれ言えませんが。

 そういえば、仕事で必要な資料なら仕事中でもいいから本屋とか図書館とか散歩がてらお出かけしておいでー…と、心の広い司令塔様が仰ったのですが。
 うちの司令塔さんは割と放任主義で、成果を出すなら方法は問わん! と言い切るイイ上司です。サカキチだけど、
 で。
 …とうきょうほうめんの、せんもんしょがたんまりあるような、おおきいほんやさんって、どこ?
 横浜じゃなくて東京行け、と言われたのですが、横浜じゃダメかなー。そりゃ東京行くほうが近いけどさー。
 うう、今度東京方面で仕事してる人に聞こう…。
 あみゃぞんは立ち読みが出来ないから、中身を知ってから買うのには向かないんだよねー…。
 出歩くのが大嫌いな性癖が、仕事でまで影響するとは思わなかった。いつも仕事の本なんて、あみゃぞんか有○堂(神奈川で大手本屋)で済ませてたよ!

 さんざん仕事は嫌いだ嫌いだと言っているのに、たまに周囲に「何だかんだで楽しそうだね」と言われます。たの、しい…?
 仕事の出来る人たちに囲まれている幸せはありますが、割と日々一杯一杯です。
 嗚呼、夏休みがいつまでも続けばイイ(のに)ナ!(見たこともない噂のマイメロ調で)




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