小ネタ日記ex

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ネオメロドラマティック(デス種/シンとカガリ)
2005年03月06日(日)

 人がどうしてと呟く瞬間。








 彼のところに下ったミッションは『他国の要人を無傷で救出せよ』という割にセオリーなものだった。
 現場となるプラントの某国大使館に押し入ったテロリストたちの制圧は別部隊が中心となり、あくまでもシン・アスカという一人の軍人に課せられたのは『要人救出』である。平たく言えば、他方がかき回している隙に目的人物を掻っ攫え、と言われたに過ぎない。
 軍に属する人間が己に下された命令を拒否する権利はない。彼は表向きは粛々とその意に従ったが、内心は不平を鳴らせるものなら大声で怒鳴りたかった。
 現場に突入してからもその気持ちにあまり変わりはない。
「…まさかお前が来るとはな」
 原因は、シンの背後でしみじみ呟いている妙齢の金髪女性のおかげだ。
「余計な声出さないで下さい。そのぐらいわかるんじゃないですか? アスハ代表」
 自分の天敵か何かに対するようにぶすくれた声を出す年下の少年に、金髪の若き国家元首は小さく苦笑する。
「それはすまないな」
 物陰に潜み、一気に脱出するタイミングを計っている間にシンは脳裏に叩き込んでいる大使館の見取り図を空上に展開させる。表通りに面している場所では突入部隊とテロリストが戦闘に入っている。制圧されるのを待つか、それとも。
「さっさと逃げたほうがいいだろうな」
 片膝を大理石の上に付き、判断に迷ったシンに隣でしゃがんでいる金髪女性がさらりと口を出した。
 光沢のある裾の長いドレス、優雅に纏め上げられた髪と首元と耳たぶを彩る輝石。カガリ・ユラ・アスハという名の彼女はこの大使館で人質となっていた人間の中でもトップクラスの要人だった。
 そのためにわざわざ彼女だけが個室に拘束されており、彼女のためだけにシンら別働隊が組織されたのだが、命令でなければシンはさっさとこの任務から下りていた。
「黙ってて下さいって言ったでしょう」
「ああすまないな。だが、いつまでこうしている気だ? どうせまたどこかに支援部隊がいるんだろう。だったら今のうちにここを離れたほうが得策だと思うが」
「…すいませんね、俺一人しかいないもんで」
 一人でナチュラルの女性を庇ってそこまでたどり着くか、それを模索していたシンは若干鼻白む。彼女の意見は自分勝手だ。少しはこちらの苦労も考えて欲しい。
「一人じゃないだろう、二人だ」
「は?」
「オーブの姫が銃一つ扱えないと思っているか? 予備があるなら寄越せ。どうせどこぞの隊長に余分に持たされているだろ?」
「…………………」
 ずいとドレスと同じ色の手袋をした手を差し出され、シンはしばし呆然とその手を見る。
 確かに予備は軍服の隠しにもう一つある。今シンが持っている支給されたものより小型のそれは、作戦会議の折に指揮を執る隊長から渡されたものだ。
 予備だとしても同型のほうがいいと主張したシンに、彼はかすかに息を吐き手を振って「これでいい」と言ったのだ。あのときの緑の双眸。アスラン・ザラの意図。
「あの人は…ぁッ」
 自分より少し上の隊長を思い出し、シンは頭の中の温度が一瞬で上がった。
 救出相手の戦力まであてにしてどうする…!?
「あいつは結構ヤな奴だぞ」
 またシンの考えを読んだのか、カガリは肩をすくめた。それをきっと紅の目で睨みながらシンは口を開く。
「そんなんだったら、なんで自分で行かないんですかあの人はッ」
「さあな。大方、部下の経験値になるから自分は引っ込もうとか思ったんじゃないか?」
「知りませんよ、そんなのっ。ああもう、どうせ外で眉間に皺寄せてイライラしてるくせに!」
「ついでに腕組みをしてな。わかりやすいだろ」
 教えるようにシンの顔の前で指を一本立てるカガリにも、シンは脱力しかけた。仮にも生命の危機という状況だというのに、この落ち着きは何だ。
「で、早くしないと痺れを切らしてその隊長殿が突っ込んでくるぞ」
「はい?」
 もうわけがわからない。このペースに乗らないよう己を叱咤し、シンは金髪の彼女にうろんげな目を向けた。
「あいつは落ち着いているようで火がついたら即効だ。しかも一度潰すと決めたら徹底的に叩くぞ」
「………………」
 部下歴数ヶ月の自分と、恋人歴数年の彼女。どちらの言を信じるかといえば、シンとて後者を選ぶ。
「あいつが出張ると色々面倒だからな。私もザフトと縁があると今知られるのはまずい」
「…さよーですか」
 要はこれしか道はないらしい。仕方なくシンは左手を軍服の合わせに突っ込み、乱暴に予備の弾薬と共にカガリに渡した。
「…使い方、わかるんですよね?」
「あんまり馬鹿にするな」
 不満げに鼻を鳴らしたカガリは右手の手袋を歯を使って外している。すでにその所作が淑女のそれではない。
 オーブのアスハといえば最大首長家であり、その家の娘といえば生まれついての姫君、いわゆるお嬢様だと思っていたかつての自分に、シンは心からため息をついた。
「使い方がわかっても、撃てなきゃ意味ないですからね」
 皮肉を込めて言ったはずの言葉は、相手の強いうなずきで返された。
「身を守る上で割り切らなければならないこともあるからな」
「…出来たら撃たないで下さい」
「何でだ」
「……俺の立場がありません」
 これでもシンは軍人でミッション中で、彼女は現在のシンにとって嫌でも『守らなければならない相手』なのだ。その相手に銃撃戦でもやらせて怪我でもさせたら、後で例の隊長殿からどれだけしつこい叱責を食らうことか。
 けれど金髪で年上の彼女はあけっぴろに笑った。
「そんなこと気にしなくていいんじゃないか? 緊急事態なんだから」
「あなたはよくても俺は気にするんです」
「そうか。でも、万が一のときはちゃんと助けてやるから」
 な、と近い距離で笑われ、シンは現状を忘れて片手の甲で額を押さえた。一体このひとは自分の立場とかそういうものをどこに置いて喋っているのだろう。
 しかしこれで失敗して帰ろうものなら、やはりあの隊長がおそろしい。自分を見失わない決意を心で呟き、シンは顔を上げた。
「いいですか? 守るのは俺です。あなたはともかくここから出ることだけを考えて下さい。俺はそのために来たんです」
「…………」
「ここでは俺の指示に従って下さい。…お願いですから」
 眉間の辺りに力を入れながら言ったシンの言葉は、どこか尻すぼみになった。
 カガリはそんな黒髪の少年の顔をじっと見つめ、ややあって小さく笑む。
「…ああ、わかった。じゃあよろしく頼む」
 その金褐色の目には、シンに対する確かな信頼がある。それはきっとシンの上官に付随するゆえだとわかっていたが、シンは彼女が自分の言を受け入れてくれたことに安堵した。
 過去の出来事のために、シンは未だ彼女と彼女に連なる家柄にあまり良い思いを抱いていない。それでも彼女は、シンを恋人の部下という立場だけで信じてくれるのだろう。
 傲慢なまでに馬鹿正直なお姫様だ。
 考察はそれで切り上げ、シンは一つ息を吸う。
「行きますよ」
 無傷で届けてやろうじゃないか、あの野郎。
 上官の目の前では決して言えない言葉で誓いを立てると、彼の目の前のお姫様も呼応したように不敵な笑みをひらめかせた。








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 ノリだけで書いたような小ネタですいません…。一体いつどこなのこれ。
 ギャグというよりコメディのノリのつもりです。多分。そしてシンカガではありません。ただの組み合わせ。

 シンとカガリさんはどっちも武闘派だと思うので、救出@銃撃戦とかだったりするなら、ぎゃーぎゃー喧嘩しながら連携見せてくれそうかな、と(何割が妄想ですか)。
 途中カガリが前に出ると「ちょ、何俺より前出てんですかあなたは!」と慌てるシンとかいればいい。うっかり擦り傷とか作ったカガリさん見て「うわこれで俺怒られるの確定かよ!」とか内心で頭抱えるのもよろしい(何が)。
 そしてアスランは蚊帳の外確定で。

 ポルノの新曲がタイトルといい曲調といい、非常にこういうイメージだったので思いついたネタでした(わかりにくいな…)。




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