彼を
逢う前に彼は、今度もたくさん話そうねと言った。
毎夜、話していても、顔を見ながら、彼に触れながら
話す喜びは大きい。
彼の全てにくちづけし、彼の全てを手でなぞる。
私の全てを包み込み、私の全てを愛した。
あのとき、あの場所に決めたのが間違いだった。
あの時間、俺がいさえすれば。
たまに口をつく過去の後悔。
彼の顔が曇り、悲しみが伝染する。
逢うたびに、嫉妬と憎悪が現れる。
それに少し甘んじて、少し逆襲する。
逢いに行こうと、調べたんだ。
空路でも新幹線でも遠かった。
それはいつのこと?
去年の秋ごろかな。
私が消えても生きていけると、複数の手軽な相手を
見つけながら、それでも忘れないでいてくれた。
次の仕事の合否の返事を待っていた日、
上司に見つからないように、苦労したよ。
辞めるか留まるかの回答を、その日に言わないと
いけなかった。不採用なら、困るでしょう。
そんな話、初めて聞いた。
だって、あのとき、私の話は聞いてくれなかった。
忙しかったでしょう。
2年前のたった1日を切り取っても、話せなかった
事柄が多いと、今更ながら思う。
ようしかいない。
他の人を探したけれど、いつも比べてしまった。
彼の腰に手を回し、彼の顔を見上げると
優しく強く抱きしめられる。
ここが私の居場所だと、愛しさと恋しさで
泣きそうになる。
ようみたいな顔の人は、他にいないの?
私みたいな年代の人なら、たくさんいるよ。
そんなの、いらない。
私みたいな、我が侭勝手な人はたくさんいる。
だけど、彼の元に戻れるのは私だけ。
彼のような、ひどい人はたくさんいる。
だけど、私を求め続けてくれるのは彼だけ。
2005年05月18日(水)
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