無知の落とし穴
友達から電話があった。
今すぐに保険証が欲しい。
どうすればいい?
彼女はサバサバした性格で、知り合ってすぐに仲良くなった。
その頃、彼女は、子宮外妊娠の後遺症で、鈍痛が続いていた。
私は詳しい事情を聞いた。
同棲していた彼氏がいたこと。
その彼との行為で、子宮外妊娠したこと。
彼氏と別れたかったので、彼氏には何も言わず
病院には一人で行ったこと。
堕胎の処置がうまくいかなったようで
私と知り合った時、数ヶ月経っていたのに
痛みと出血と違和感があること。
肌は荒れ、ニキビが顔半分から首筋にまで広がっていた。
一度、私の部屋に泊まりに来た。
その夜、彼女の性行為への考えを聞いた。
彼女にとって、セックスはスポーツらしい。
あっけらかんと話す彼女に、私は驚いた。
彼女が身体に受けた傷は、彼女のスポーツ論を覆さなかった。
堕胎経験は2度。
それでも、セックスはスポーツだと思っていた。
その彼女からの電話の内容に、また驚かされた。
妊娠したので保険証が欲しい。
それも今すぐに。
相手は、2度堕胎した、同じ彼氏。
どこに行けば、保険証をもらえるの?
私はすぐには発行されないこと
とにかく、電話を切ったら役所に行くように言った。
彼女にとって恋愛とはなんだろう。
多数の相手とスポーツ感覚で。
妊娠させた相手が同じことに、少しほっとしたのと同時に
何度も妊娠して、そのたびに中絶する進歩のなさに呆れた。
そして、年金手帳を見たことがなく
現在、保険証を持っていないこと。
人の悪口、陰口を言わない彼女。
祖母の身を案じて、老人ホームに何度も見舞う彼女。
頭の回転が速く、話していて楽しい彼女。
彼女の中のよいところ、無知なところ、物や人に対する善悪。
もっと自分の身体を大切にしなさい。
何度も言ったのに、彼女には伝わらない。
いや、大切にしたいと思いながら
逆のことを続けてしまうのかもしれない。
学校で教えてもらう、色んな教科は実生活に役に立つこともある。
だけど、もっと肝心なことを、繰り返し教えるべきじゃないかと思う。
社会保険制度の概論でなく、もっと身近な役所での手続きの仕方。
お茶を濁すような性教育のために時間を取るなら
もっと違ったアプローチの仕方があると思う。
この彼女は、10代じゃない。
30前の、社会でいうところの「立派な大人」だ。
自分を守るために
自分で情報収集し、学ばなければいけない。
それはそのとおりだし、そうでなければいけない。
だけど、空論や概論でなく
もっと実践的な基本的な身近なことを
義務教育の段階で教えるべきだ。
2004年06月20日(日)
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