曇り日。陽射しは無かったが気温は20℃に達していた。
晴れていたら夏日になっていたことだろう。
山里の桜も蕾が膨らみ始め明日にでも開花しそうである。
今日は東京が開花。能登の被災地は4月9日の予想であった。
田植えの準備は着々と進んでいるが困ったことに水不足なのだそうだ。
まとまった雨が降ってくれないと田んぼに水が張れない。
今日も米農家のお客さんが順調に田植えまで漕ぎつけるかと嘆いていた。
義父は毎朝ハウスの稲苗の管理に行っており
ぐんぐんと育っている苗に焦り始めている様子である。
その上に今日はまた高知市で理事会があり朝食も食べずに出掛けた。
せめてもと栄養ドリンクを手渡し見送ったことだった。
工場は今日も忙しく同僚が一人で頑張ってくれていたが
午後に警察署から電話があり驚く。
お客さんの大型車が走行不能となり県道で立ち往生しているとのこと。
警察官が交通整理をしているので早急に動かして欲しいと要請があった。
義父は会議中であったが連絡が取れ同僚が現場へ駆け付ける。
どうやらクラッチが焼け付いているようで匂いが出ていたようだ。
会社の運搬車で牽引に行き何とか路肩まで動かすことが出来る。
後は明日義父に任せ工場まで牽引することになった。
林業のお客さんはすっかり困り果てており気の毒でならない。
工場は車検の予約でいっぱいになっており直ぐに修理出来そうにないのだ。
何とかしてやらねば。段取りで頭を悩ますことになった。
同僚一人では手に負えないことは見えており義父の助けが必要だが
田植えの事で頭がいっぱいになっているので困ったものである。
しかし彼は社長である。ここは優先順位を考えて貰わねばならない。
気ばかりが急いていたが残業をしても何も変わらなかった。
とにかく明日のことにして定時で帰路に就く。
少しパニック気味になっていたせいかラジオの「石川さゆり」が好かった。
「さよならあなた私は帰ります」と口ずさみながら帰る。
帰宅したら大相撲ロスの夫がぼんやりと佇んでいた。
なんだか憐れでならない午後4時である。
仕事帰りの息子も久しぶりに顔を見せてくれたが
疲れもあったのだろう愚痴と弱音の嵐であった。
けい君が春休みとなり昼食の準備に困っているのだそうだ。
もう6年生になるのだものカップ麺くらい作れるはずなのだが
息子がわざわざ昼休みに帰宅していると聞きおどろく。
まだ春休みが始まったばかりなのに「俺はもうしんどい」と嘆く。
市のシルバー人材センタに頼めば家政婦さんを雇えるらしく
息子が帰宅してから電話で提案してみたらへらへらと笑い飛ばすのだった。
息子はただ弱音を吐きたかっただけなのだ。
愚痴を聞いて欲しかっただけだったのだ。
娘と夫に話せば「それを真に受けたのか」と大笑いされてしまう。
けれども辛そうな息子の力になりたいのが母心でなくて何だろう。
男手一つで家庭を守り子供を育てて行くことがどれほど大変なことか。
たとえそれが息子が選んだ道であっても気遣わすにはいられない。
息子もけい君もやがて逞しくなるだろう。
父と母はそうして老いていく定めである。
|