連日の小春日和。今日は昨日よりも暖かくなり汗ばむ程の陽気となる。
紅葉の季節は晩秋だが今年は全国的に遅れているのだそうだ。
見頃は12月の中旬だと聞きおどろくばかりである。
樹々も戸惑っていることだろう。それだけ寒さが必要なのだった。
山里は杉や檜が多く山が燃えるように紅く染まることはないが
銀杏の木やもみじはあちらこちらに植えられており目を楽しませてくれる。
決して遅れているようには見えないのだがまだこれからなのだろう。
師走の紅葉もまた風情があり見応えがあるものだ。
冬の花は山茶花。ほぼ満開となり心を和ませてくれている。
隣家にも薄桃色の山茶花が咲いておりまるで我が家の庭のように思う。
奥さんはもうかなり高齢になり滅多に姿を見ることはないが
山茶花が咲いていることにはきっと気づいているだろう。
すぐ近所に住む亡きご主人の弟さんがいつも庭の手入れをしているようだ。
仕事は今日も一日車検が入庫していた。
義父の友人の息子さんの紹介で初めてのお客さんである。
午後には車検が完了し義父が納車に行ってくれた。
決して失礼があってはならない。丁重に感謝の気持ちを伝え
今後のお付き合いへと発展さす為だった。
同僚には任せられず「俺が行かんとな」と社長の任務を果たす。
今日ほど義父が頼もしく思ったことはなかった。
田舎の小さな車検場である。新規のお客様はとても貴重であった。
仕事が一段落し3時に退社する。
今日はサニーマートのお総菜売り場をスルーした。
いつもいつも手抜きなのだ。今日こそは頑張ろうと思う。
5時半には間に合わなかったが6時には夕食の支度が整う。
娘が帰宅し「やるじゃん」と褒めてくれて嬉しかった。
「明日は何にする?」と訊くので特に考えてもいなかったのだが
私の誕生日なのを覚えていてくれたのだった。
夫は例の如くですっかり忘れていたらしく「そうか、そうか」と喜ぶ。
娘が「ステーキにしよう」と云うのでそうすることにした。
自分では少しも祝う気持ちなどなかったのだが有難いことであった。
嫁いでから初めての誕生日を思い出す。
その日夫と私は入籍をしたがいつもと変わらない夜であった。
何と寂しかったことだろう。婚家には誕生日を祝う習慣が無かったのだ。
偶然だったが姑さんが私専用のお箸を買って来てくれていた。
誕生日とは知らずにふっと思いついたことだったのだろう。
そうとは分かっていてもそのお箸がとても嬉しかったことが忘れられない。
姑さんには良い思い出が殆ど無いが唯一それが「宝物」のように思えた。
67歳最後の夜である。今のところ夢も希望もない。
ただまた一歩「死」に近づくのだなと思うばかりであった。
なんだか「生きたい」欲に圧し潰されてしまいそうだ。
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