雲が多かったが概ね晴れ。北風が身震いするほど冷たかった。
師走も目前である。木枯らしが吹く季節になることだろう。
朝から武者震い。気負いをそのままに山里の職場に向かった。
9時になるのを待ち兼ねてATMへと走る。
取引先への送金を終えると何とほっとしたことか。
不都合だけは避けなければならないと気が張っていたのだろう。
義父に報告したら「今月もようやったな」と褒めてくれ嬉しかった。
波は荒いが沈むことなく海を彷徨っている難破船である。
錨を下ろす日もあるだろう。そうして空を見上げる穏やかな日も。
午後には義父が手掛けたトラクターの修理代が入る。
農機具店よりもずっと安いとお客さんは上機嫌だった。
来店したついでにと軽トラックのオイル交換も申し出てくれる。
幼馴染の同級生K君であった。待ち時間の間に会話が弾む。
懐かしい同級生達の名前が次々に出て来た。
既に亡くなってしまった友もいる。親友だったMちゃんのことも
懐かしさよりも失ってしまった悲しみの方が勝る。
もう7年を過ぎたがMちゃんの顔が目に浮かぶたびに辛くてならない。
T君も死んだ。H君も死んだ。死はそれ程までに身近なのである。
直ぐに70歳になるなあ。しみじみとK君が呟く。
信じたくはなかったがそれが現実でなくて何だろうと思う。
後を追うように寿命が尽きていく。それはどうしようも出来ないことだ。
「お互い長生きをしようね」他にはどんな言葉も見つからない。
月末の仕事も一段落していたので2時半に退社する。
今日は「いい肉の日」なのですき焼きにしようと決めていた。
精肉売り場に直行し愕然とする。格安の輸入肉が全く置いていない。
高級な和牛ばかりがこれでもかとあり仕方なく2パック買った。
白菜も高い。長ネギも高い。貧乏人にはこれ程辛いことはない。
娘が臨時の休みだったので帰宅してからの何と楽なこと。
すき焼きの準備もちゃちゃっとしてくれて大助かりだった。
いつものように夫と先に食べ始めたのだが
後のことは全く考えずお肉ばかりよく食べる。
ビールを飲みご飯を食べ終えてからもまだ箸を伸ばしていた。
食い意地が張っているのかもしれないがこれにはいささか参る。
私はお肉を食べずお豆腐しか食べていなかったので尚更であった。
家族6人が揃って食べることが出来るのが一番であったが
それは今後も在り得ないことだと思う。
気を遣い過ぎてもいけないがささやかな遠慮も必要ではないだろうか。
娘夫婦が食べ始めても孫達は顔を見せなかった。
後から食べるらしいがお肉は残してあるのだろうか。
些細なことかもしれないが気になって仕方ない夜のことである。
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