猛暑も一休み。山里では午後雷雨があった。
つかの間のことであったが一気に気温が下がる。
「立秋」も近くなんだか希望のように思えて来た。
終らない夏など決してありはしないのだ。
今朝の山道では鉄砲百合を多く見かける。
少し調べてみたら「高砂百合」が本当のようだ。
初夏に咲く鉄砲百合の仲間ではあるが花の形が違うらしい。
素人目では見分けがつかず私はずっと鉄砲百合だと思っていた。
山肌に咲いていることが多く群生しているようだった。
純白で清楚な花は本来の百合の姿なのに違いない。
週末にはもうお盆休みに突入するためか仕事の忙しいこと。
車検の入庫や相変わらずエアコン修理も多かった。
義父の機嫌がすこぶる悪い。苛立ちがピークになっているようだ。
朝の内はしぶしぶ仕事をしてくれたが直ぐにまた田んぼへ走る。
お昼になっても帰らず今日も昼食抜きであった。
畔の草刈りがそれ程までに大切なのかと思う。
恐る恐る訊けば稲刈り前に済ましておかなければいけないのだそうだ。
今年は特に夏草の成長が著しく何処も大草になっているらしい。
その分稲の成長も早く気が急くばかりなのだろう。
村でも一二を争う作付け数であった。その苦労は並大抵のことではない。
とにかく機嫌を損ねないこと。それは少なからずストレスになっていく。
そうして上手に回していかなければいけない。それも私の仕事であった。
お盆が近くなりお供え物を持って来てくれる人も多くなった。
仏壇にはまだ供えられず事務所に山積みになっている。
そのまま放置出来ないことは義父も心得ているようだ。
私は何も手伝えず心苦しくてならないが義父に任せるしかなかった。
迎え火を焚けば母が帰って来るのだろうか。
多忙な義父の傍らで寛ぐことが出来るのだろうか。
いっそのこと我が家へと思ったが二ヵ所で迎え火を焚いてはいけないらしい。
霊が迷うのだろう。そうして帰る場所を見失ってしまったら
母があまりにも憐れで可哀想に思えて来る。
もしかしたら「帰らんでもえい」と拗ねているかもしれなかった。
そんな母をどうやって宥めたら良いのだろう。
初めての盆帰りである。母には楽しみに帰って来て欲しかった。
声も聴こえず姿も見えないが母の魂はいったい何処にいるのだろう。
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