二十四節気の「夏至」一年で最も日が長い日である。
また本格的な夏を迎える節目でもあった。
午後七時。外はまだ昼間のように明るい。
生憎の曇り空で太陽は見えないが
ゆっくりと西の空へ沈んでいくことだろう。
日中は陽射しが溢れ真夏日の一歩手前
湿度が高かったのか風もなく蒸し暑い一日だった。
事務所にはエアコンがあるが工場には扇風機しかなく
心苦しさがつのるばかりであった。
同僚が汗を流してくれるおかげで整備の仕事は捗っていたが
肝心の義父はどうやら二日酔いのようであった。
田植えをした日は必ず打ち上げがあるのだから仕方あるまい。
11時頃になりやっと工場に顔を見せてくれる。
二日酔いよりも疲労が大きいのではないだろうかあまり元気がなかった。
急かしてはいけないと思い同僚も私も義父のペースに合わせる。
とんとん拍子とはいかないもので一台目の車検から手こずっていた。
手直しをしながらで一時間も費やしてしまう。
後まだ3台の車検が控えていてとても短時間では終わりそうになかった。
仕方なく同僚に無理を言ってお昼休みを返上してもらう。
もちろん私も義父もである。タイムリミットは3時であった。
ヘルニアの持病がある同僚は毎週金曜日が通院日であり
私も昨日予約が取れなかったので今日がリハビリだった。
義父もそれは心得ていて間に合うようにと努力してくれていた。
後の三台はスムーズに車検が通りなんとほっとしたことだろう。
2時に同僚を退社させる。とにかく昼食を食べさせてやらねば。
無理を言って本当に済まなかったと心から詫びる。
車検が完了したら保安基準適合証の作成であった。
義父が記録簿を記入し私が適合証を書く。
慌てるとミスをしてしまうので慎重な作業だった。
2時30分、やっと全ての書類を書き終える。
もう納車をする時間がなかったのでお客さんに来てもらった。
随分と待たせたのに苦情のひとつもこぼさずにいてくれる。
長年の信頼あってのことだろう。本当に有難いことだと思った。
気を揉み続けた日々であったがやっとひと山越えたようだ。
ずっと精神的に追い詰められていたような気がする。
私は毎日そうして試されていたのだろう。
自分一人ではどうしようも出来ないこと。
田舎の小さな車検場ではあるが皆で力を合わせていかねばならない。
今日ほどそれを思い知った日はなかったように思う。
一人でも欠けたらお終いなのだ。常にぎりぎりの瀬戸際である。
整形外科でリハビリを終えて外に出たら同僚と一緒になった。
「あっこちゃ〜ん」と呼び止め今日の苦労をねぎらう。
彼は明日も仕事なのだ。ただただ頭が下がるばかりであった。
あっこちゃんの私服はなかなか良い。
さっぱりと清潔感が漂いまた惚れてしまいそうだった。
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