雨の一日。夕方になりやっと降りやむ。
この雨で遅咲きのぼたん桜も散ってしまって
とうとう桜の季節も終わりを告げる。
そうして新緑の季節がもう始まっているようだ。
雨に潤う柿の葉のなんと艶やかなことだろう。
今日は職場で大変なことがあった。
同僚が体調不良を訴え倒れるほどではなかったけれど
念のために掛かりつけの病院に行かせたところ
そこからそのまま県立病院へ救急搬送されたのだった。
高齢のお母さんと二人暮らし。近くに頼れる身内もなく
もう仕事どころではなくなり私が病院へ駆けつけて行った。
不整脈の発作だったようで幸い命に別状はなかったけれど
そのまま無理をさせていたら取り返しのつかない事になっていた。
同僚だけが頼りの職場。それが重荷になっていたのかもしれない。
今更ながら日頃の苦労をねぎらうきっかけにもなった。
応急処置で発作は治まり入院もせずに済み何よりだった。
「今日は休業にしようね」と自宅で安静にするように伝える。
勤続40年が近い。同僚も60歳が近くなっていた。
私が勤め始めた頃はまだ20代の若者だったのだ。
不況の波に煽られながら去って行った同僚も多いのに
彼は最後まで辞めずにいてくれてとうとう私と二人きりになった。
母の事実上の引退。社長の義父も80歳が近くなった。
難破船のような会社は今も波に揉まれながらも海を漂っている。
何処かの島に辿り着くのだろうか。それさえも定かではない。
もしもこの先、最後の日を迎える日が来ても
私は彼と一緒に見届けたいと心からそう思うのだった。
明日はあしたの風が吹く。きっと青空に違いない。
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