幸いなことに台風の直撃を免れる。 一時は荒れたものの夕方には台風一過の青空が見えた。
午前中は予定通り娘の家に行っていたけれど、 だんだんと雨と風が激しくなり始めて急いで帰宅する。 家政婦らしきこともろくに出来ず娘に申し訳なかった。 いっそ嵐が過ぎ去るまで一緒に居れば良かったと後から思う。
綾菜はおりこうさんでいてくれたかしら。 娘はちゃんと夕食の支度が出来ただろうか。
30分でも一時間でも多く助けてあげたかったなと思う。

雨がやんでくれたおかげでいつもの散歩に行く事が出来た。 まだ風は強かったけれど背中を押されるようにお大師堂へ向う。
見覚えのある靴。思ったとおりそれはMさんの靴だった。 前回会ってからひと月と少し、お互い笑顔で再会を喜び合う。
嵐の中を何が何でもお大師堂へ辿り着こうと必死で歩いて来たそうだ。 まるで我が家に帰って来たように寛いでいるMさんを見てほっとする。
もう24巡目のお遍路。すっかり職業遍路になってしまったけれど。 故郷の山梨には嫁がれた娘さんが居て、電話する度に帰って来てと言われるのだそうだ。
Mさんも本当は帰りたい。けれども娘夫婦の世話になるわけにはいかない。 そんな話を聞いているとなんともせつなくなって胸が熱くなるのだった。
初孫が出来たら帰りたいな。まるで夢のようにMさんは語る。 それは決して夢ではないこと。帰る場所がある待っていてくれる家族がいる。 それが何よりの励みではないかと思うのだった。
Mさんの春夏秋冬をおもう。特に夏と冬の厳しさはどんなにか辛い事だろう。
いろんな日があっていろんな出会いがあって嬉しい日も辛い日もちゃんと生きている。
生きることはほんとうに楽しい。Mさんの笑顔はいつもピカイチだった。
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