つかの間の春はとうとういってしまったのだろうか。 「立夏」にふさわしく真夏日となり眩しいほどの陽射しだった。
朝のうちに川仕事を済ませ午後には産院に駆けつける日々。 休む暇もないけれど、それがむしろ嬉しくてたまらないバーバであった。
娘は初めての育児に奮闘している。まだ抱き方さえもぎこちなくて。 母乳もうまく飲ませられない。誰だって最初はそうなのよと励ます。
肝心なのは決して焦らないこと。ゆっくりのんびりで良いのだと思う。
赤ちゃんはすやすやとよく眠っている。目を覚ましてくれないかしら。 ずっと寝顔を覗き込んでいるばかり。いつまでたっても見飽きる事のない寝顔。
「今日もお大師さまにお参りしてきてね」娘の言葉にうなずき帰宅する。 お大師堂にはふたりのお遍路さんが来ていてくれた。 一人は先日の長髪青年だった。無理強いしたことを詫びると思いがけない笑顔。 良い経験が出来たと喜んでくれてほんとにほっとした。 そのことを報告したくてわざわざ打ち戻って来てくれたのだそうだ。
もう一人のお遍路さんも交えて雑談をしていると、新たなお遍路さんが到着。 その人も顔なじみのお遍路さんですっかりにぎやかになった。
今夜は三人で「旅もみちづれね」って笑いあって別れたのだけれど。 その後あんずを連れて散歩をしているとお大師堂を探しているお遍路さんに会った。
道案内がてら一緒に行く。なんと四人になる。こんなことは初めてではないか。 小さなお堂で四人は窮屈そうに思えたけれど、お遍路さん達は大丈夫と言ってくれた。
こんな日もあるのだな。帰り道はなんだか胸がいっぱいになった。
土手を吹き抜ける夕風が心地よい。ああ今日も暮れていくんだな。
いい日だったなってすごく思った。明日もきっといい日に違いない。
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