四月だというのに風の冷たいいちにち。 時折りひゅるひゅると強く吹く風に。 桜が少しずつ散り始めてしまった。
はらりはらりと風に舞う花びら。 儚いけれど桜吹雪もまた良いものだった。
そうして季節は新緑の季節へと移っていく。 葉桜もまたその艶やかな緑が目に沁みるようだ。
散歩道を行けば、お大師堂でMさんが待っていてくれた。 すっかり顔なじみになったお遍路さんである。 いつも私のことを「おかあさん」と呼んでくれる。 ちょっとくすぐったいけれどそれが嬉しかった。
もう22巡目の巡礼、山梨には一度も帰っていないらしい。 そのわけを訊く事も出来ず、何がMさんをそうさせているものか。 Mさんの笑顔はとてもあたたかい。瞳はいつもきらきらと輝いている。
ふたりでしばし桜の木を仰いでいた。
散りますね。しかたないことですね。なんて言い合いながら。
ここに来るとほんとにほっとするんですよとMさんは微笑んでいた。
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