おひさまが優しく微笑んでくれてほんわかと暖かい。 冬の背中がずいぶんと遠くなった。もう振り向かないでいて。 願うように後姿を見ていた。さようならとありがとう。 寒い冬がなければ春をこんなに嬉しく感じることはなかっただろう。
午前中に年金事務所に行く。彼の年金請求の手続きだった。 市役所にも行き必要なものなど揃えたりしてけっこう大変。 半日がかりでやっと手続きが済む。ほっと一安心だった。
思いがけなかったのは、彼がまだ10代の頃、東京で働いていた事。 わずか13ヶ月だったけれどちゃんと厚生年金に加入していたらしい。 例の年金騒動でその期間の資料が迷子になっていた事が判明した。 名前のフリガナが一字間違っていた。それが原因だったらしい。 この分もちゃんと支給されますからと言ってもらえて嬉しかった。
集団就職。「金のたまご」と呼ばれた時代の事であった。 15歳を過ぎたばかりの彼はどんなにか幼かったことだろう。 昼間は働き夜は高校に行く。大都会の片隅で頑張っていた彼。 そんな彼が肺ジストマになってしまい仕方なく帰郷しなければいけなかった。
まともに歩くことも出来ず、父親の背中におわれて帰って来たのだそうだ。 あの時はすごく辛かったよ。そして悔しかったよと彼は話してくれた。
13ヶ月。お父さんはすごくえらかったよって私はほめてあげた。 年金もちゃんともらえるんだよ。すごいことじゃないのって言って。
七年前にリストラにあうまで彼は家族のために一生懸命働いてくれた。 タンクローリーに乗ったりミキサー車にも乗ったり建設作業員もした。
もらえる年金はわずかなものだけれど、労働の価値はとても大きい。 その大きさをしみじみと感じながら彼の苦労を労ってあげたいと思う。
お父さんほんとにありがとう。年金、大事に大事にしようね。
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