小雨が降ったりやんだりの寒いいちにち。 春だ春だとはしゃいでいたけれどやはり寒の戻りがあった。
けれども嘆かずにいよう。 タンポポもつくしの坊やたちもじっと耐えている。
散歩の頃にはちょうど雨がやんでいて良かった。 それにしても冷たい風。毛糸の帽子を被って出掛ける。
お大師堂の近くにゴミが散乱していて困ってしまう。 見て見ぬふりは出来ず例のごとくでそれを拾い始めた。 するとあんずが急に暴れ始めてどうにも手に負えなくなる。
「もう勝手にしなさい!」 私も苛立ってしまってリードから手を放してしまった。
一目散で逃げ出して行くあんず。好きなようにすれば良いのだ。 追いかける気にもならずそのままゴミを拾い続けていた。
そうしてそのまま歩き始める。振り向いてもあんずの姿が見えない。 もしかしたら先に家に帰っているかもと思ったけれど帰っていなかった。
「ほんとにしょうがない子ね」ぼやきながらもなんだか愉快になって。 また土手にあがりあんずの姿を探してみる。いたいた、ほらあそこに。
そこは仲良し犬のランちゃんちの近くだった。 土手の石段や草むらにランちゃんの匂いが残っているのだろうか。 何かにとりつかれたようにくんくんとひたすら匂いを嗅いでいるあんず。
その姿があまりにも微笑ましくてもう怒る気にもならなかった。 ランちゃんに会いたかったのだね。ランちゃん大好きだものね。
私の姿に気づいたのかとぼとぼと近寄って来るあんず。 「おかあさん、ランちゃんいなかったよ」とその目が少しせつない。
そうね。今日はお母さんが悪かったよ。ごめんねあんず。
明日はランちゃんに会えたらいいね。会えたらまたキスしようね。
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