夕陽を見るひまもなくあたりがすっかり暗くなる。 それを待ちかねていたように秋の虫たちが歌い始めた。
とてもにぎやかだけれどそれもまたのどか。 一晩中歌い続けるであろうちいさな命を想う。
りりん。りりんと私が虫ならばそう歌ってみたい。 お遍路さんの鈴の音のように声を響かせてみたかった。
いつもの散歩道。ススキの穂がずいぶんと育った。 ともに風に吹かれていると清々しい気持ちになる。 たとえばちっぽけな憂鬱もすぐに消え去ってしまう。
思い煩うことなどなにもないのだなとあらためて思う。
お大師堂の庭には白い萩の花が満開だった。 そのしだれ咲くのを手のひらで受けとめてみたくなる。 けれどもなんだか穢してしまいそうで躊躇ってしまった。
きっとだいじょうぶなのに。それを出来ない時もある。
そっとふれてみればよかったのにと少し後悔をした。
蝋燭に火を灯し手を合わせる。
平穏をありがとうございました。
どうかこの平穏がずっと続きますように。
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