その家の老夫婦が相次いで亡くなってから もう幾度目の夏なのだろうか。
今は空家同然になっているその家に 百日紅の花がそれは鮮やかに咲いているのを見た。
毎年咲いていただろうに今まで気づかなかった。 その紅はまるで生まれたばかりのように空を染めている。
散歩の帰り道はっとこころを魅かれ立ち尽くす。 こんなところに咲いてくれたのかと声をかけたくなった。
あるじ無き家はひっそりと静まりかえり ただ蝉だけがその家の木々に声を響かせているばかりだった。
百日紅あるじの声を忘れたか
そうつぶやきながらそれを否定するように首をふる。
真っ先に愛でてくれたであろうひとがいなくなっても。
花は咲く。花はずっとずっとそこで生き続けているのだ。
胸がいっぱいになった。
わたしが見つけてあげようとさえ思った。
夏がくるたびに愛でてあげようとおもった。
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