細かな雨が降ったりやんだり。 このところふつかと晴天が続かなくて。 これも春に向かう儀式のようなものかと。 鉛色の空を受け止めるように仰いでいた。
留守中に友人が訪ねて来てくれたらしい。 ポストに入っていたのは彼女が書いた随筆。 それはとても知的で文学的な文章であった。
彼女らしいなと微笑まずにいられないのは。 素直で真っ直ぐなところ。これが私だから。 そう言って押し付けるのでは決してなくて。 照れくさそうにそっと差し出す仕草だった。
読み終えてすぐに彼女と話したいなと思った。 そうしたらそれが通じたように電話のベルが。
「わたし書くよ。今年こそ書くから」弾んだ声。 こころで思ったことをそのままにしておけない。 ちゃんと文章にしてそれを書き残しておきたい。
「だから読んでね。これからも読んでね」
それは私もおなじだった。書かずにはいられない。 些細なこともありふれた日常も平凡な暮らしだって。 それを書き残すことがたとえ無意味な事であっても。
わたしいるよ。ここにいるよ。ちゃんと生きているよ。
わたしたちはそうして老いる。けれどもそうして存在する。
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