風もなくぽかぽかと暖かないちにち。 冬枯れた土手に若草の緑が目立つようになった。 今にも土筆の坊やが頭を出してきそうな気がする。
午前中は川仕事。いよいよ海苔の収穫が始まった。 生育は例年並みかなと思う。どうか順調にと願いつつ。 手を動かす。愛しいものに触れるように海苔を摘んだ。
これから五月の中旬くらいまで家業に精を出すことになる。 山里の職場のこと。母のことなど気掛かりでならないけれど。 ひとつしかない身体。こればかりはどうしようも出来ないこと。
午後はさすがに疲れがどっと出て横になったとたん眠り込んでしまう。 初日からこの調子だと先が思い遣られるけれど。そのうち慣れるさと。 気楽に。あまり不安がらずに日々を乗り越えていきたいものだと思う。
やってやれないことはない。なんとかなるさと自分に言い聞かせている。
寝起きの気だるさをふりきるようにあんずと歩いた。 にんげんの年だともう75歳くらいだと思う彼女の足取りは。 私よりもずっとずっと若く思えるほど元気に走り出そうとする。
「待って!ゆっくりよ」と声をかけるとなぬ?と振り返る。 その顔がなんともいえない。ちょっと心配顔の得意顔にも見える。
お母さん大丈夫?ほらわたしはこんなに元気だよって言っているようだ。
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