寒気が緩みほっとするような陽だまりが嬉しかった。
土手を歩いていると蓬の緑がその新芽を香らせて。 あんずがそうするようにくんくんと匂いを嗅ぎたくなる。
お大師堂で手をあわす。ちいさなお堂には西陽が溢れ。 まるで誰かに背中を抱かれているような安堵を感じた。
きのうとても嬉しい手紙が届く。 音信不通が当たり前のようになって幾年を重ねた事だろう。 誕生日には必ず手紙を書いた。しっかりとその日に着くように。 そうして微笑んでくれたらそれだけでじゅうぶんだと思っていた。 ずっと一方通行。それを寂しいと思ったことはいちどもない。 そんなカタチにこだわるまでもなく私たちには深い絆があった。
こころのこもった手紙を読み終えると感極まり涙があふれる。 穏やかな文面にほっと心が救われ。元気でいてくれることが。 何よりも嬉しく。その手を握り締めて肩を抱きしめたいと思う。
そのひとこそが私が「会わない」でいるひとだった。 ひとめ会いたいと言う事は容易い。会おうと思えば。 駆けていくことも出来るのかもしれない。けれども。 「会わない」そう決めたのだった。時々夢をみる事もある。
そのひとはいつもぼんやりとした姿をしていて。 顔がない。目もなければ口もない。けれども声が。 その声だけははっきりと聴こえてくるのだった。
その声を愛しいと言ったら罪になるのだろうか。
もしそうだといわれても私は胸をはって言うだろう。
縁というものはかけがえのない天からの恵みにほかならない。
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